水戸市に住むポーランド出身のビエルナツカ・ヤマグチ・イボナさん(44)が教えてくれたのは、ポーランドの家庭料理の「グラシュ」。シチューのような煮込み料理で、ジャガイモをすりおろして、パンケーキ風に焼いたものにかけて食べるのがおすすめという。ジャガイモは同国の主食だ。
専門学校で料理を学び、ホテルで仕事をしていた経験を持つイボナさん。「簡単に作れてとってもおいしい。ポーランドの料理にふれてもらえたら」
ポーランドは、中世ヨーロッパのカラフルで美しい街並みが残る観光地。料理でも、赤カブに似た野菜「ビーツ」を使った真っ赤なスープ「バルシチ」が有名。
何につけても色彩豊かなものを好む国民性かと思えば、「少なくとも料理は、素朴で、茶系の色合いの料理が多いんです」とイボナさん。素材の持ち味を生かして丁寧に調理した料理が多く、日本の和食にも近いという。
バルシチの赤も、着色はせず、ビーツそのものから出る色のみ。グラシュも、じっくり煮込んで肉や野菜の味わいを引き出していく。
観光で来日し、のちの夫に出会ったのが日本で暮らすようになったきっかけ。来日も、貿易会社に勤める姉の出張に同行するという気軽なものだった。当時は日本への直行便はなく、遠い国だったが、「あなたが決めたのなら大丈夫と、母が背中を押してくれました」。
2人の娘たちとは、夫は日本語で、イボナさんはポーランド語で話す。娘たちには、ポーランドの家族や親戚とも会話をして、温もりを感じてほしいとの思いからだ。
ポーランドに里帰りしたとき、イボナさんの亡き父は、孫たちに、グラシュをはじめいろいろな煮込み料理を作ってくれた。日本に戻り、台所でポーランド料理を作っていると、学校から帰ってきた娘たちが、部屋に入ってくるなり、「きょうはおじいちゃんの香りだ!」と言って喜んだ。
「言葉だけでなく、料理からも温もりは伝わるのですね。これからも丁寧に作りたい」
豚のもも肉(シチュー用)200㌘、タマネギ1/2個、マジョラム大さじ2、ローリエ1/2枚、塩・コショウ、小麦粉大さじ1~2
〈作り方〉
①フライパンに油を入れ、豚肉を強火で炒める。きつね色よりも濃い色になったら、くし形に切ったタマネギを加える
②タマネギがしんなりしたら、水300ccとマジョラム、ローリエを加えて約1時間煮込む。肉がやわらかくなったら、塩・コショウで味をつける
③水で溶いた小麦粉を加える。
ジャガイモ大2つ、卵1/2個、小麦粉大さじ1、塩1つまみ
〈作り方〉
ジャガイモをすりおろし、ほかの材料と一緒に混ぜて、油を入れたフライパンでパンケーキを作る要領で1枚ずつ焼く。表面が乾いてきたら裏返す。