駒を操る永作さん
自宅で駒を操る永作さん

 元プロの将棋棋士で、3年ほど前から、主に子どもたちを相手に将棋を指導する潮来市日の出の永作芳也さん(64)は、人生の巡り合わせを楽しんでいる様子だ。

 「一度辞めた将棋を再開したのは、将棋への恩返しのつもりもあった。でも今は、将棋も、そこから生まれる人との関係も楽しい。恩返しというより、再び将棋の世話になっている感じ」と話す。

 プロ棋士としての活動を辞したのは32歳のとき。それ以前も、その後も、永作さんのような若さで将棋の世界を引退した人はいない。また、プロの棋士になるのがいかに難しいものかは、永作さんの後に、本県出身のプロ棋士が生まれていないことで分かる。

 棋士としての段位は5段。活動を辞める直前には、その後、永世竜王、十九世名人などの称号を持つ羽生善治さんとも対局している。

 「いろいろなことがしてみたくなったから」というのが、30年あまり前の方向転換の理由だ。

 「経歴だけ見ると変わり者だと思われるけど、『会ってみると普通ですね』とよく言われる。普通だからプロの世界には残れなかった」と、淡々と話す。

 方向転換後は、いくつもの仕事に就いたが、将棋に関わることはなかった。

  再び将棋に関わるきっかけになったのは、現在の藤井 聡太 7段の登場だった。

 「羽生さんもそうだったけど、藤井君も特別。彼をみて年がいもなくわくわくしてしまった」

 指導者としての信念は、「プロ棋士を育てようなんて思ってもだめ。勝手に育っていくもの」というもの。心掛けているのは、将棋が楽しいものという雰囲気作りと、「子どもたちの成長の芽をつまないこと」。

 指導を始めたばかりのころのことを、少し恥ずかしそうに話す。「一応元プロだから、負けん気は強い。子どもがせっかくみつけた戦法を、軽く打ち破ってしまったことがある」 

 愛用する駒は、将棋ファンならだれもが知る高級品。かつて昇段祝いにもらい、引退を決めたときに、覚悟を込めて友人にゆずっていた。

 近年の永作さんの活動を知って、その友人が返してきたという。「こんなこと予想していなかった。やっぱりうれしいよ」

 教室は、同市と行方市などで開いている。永作さん☎︎090・4137・6850。

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