水筒に水をくむ鈴木さん
愛用の水筒に水をくむとうふ工房 名水亭なか里の鈴木さん

 日立市入四間(いりしけん)町の木の根坂湧水施設は、週末などには行列ができることがあるほどの人気湧水地。場所は、ここの湧水と地元産大豆で仕上げる豆腐が並ぶ「とうふ工房 名水亭なか里」の駐車場。同店の好意で、水くみ客も駐車場を利用できる。

 同店が面する県道沿いに古くからあった湧水と同じ水脈。県道の交通量が増えたことなどから、約20年前に移転された。

 水は、2つある注ぎ口から勢いよく吹き出る。手をさらすと驚くほど冷たい。東日本大震災後も水量は変わらず、断水した地域の人々の支えにもなった。

 

 同湧水地の水のファンだという水くみ客らに話を聞いた。

 同市内の馬場一己さん(75)は、ここの水をくんで20年以上で、県道沿いにあったころのこともよく知っていた。「最初に水をくみにきたきっかけは忘れたけど、最初に飲んだときの感動は覚えているよ。本当にすっきりとした水だよ」

 次の2人は、県外の湧水についても詳しかった。

 ひたちなか市の塩野紀久子さん(73)は、埼玉県から移り住んで1年。埼玉県では、秩父地方に水をくみに行っていたという。「茨城の水道水は、埼玉より良いけど、山の水には負けるね。秩父は、熊に気をつけないといけなかったけど、ここは安全でいい」と笑った。日立市の宗田雅裕さん(46)は、生まれ育った福島県の家で、湧き水を引いていたため、水道水が苦手だという。今は、千葉県出身の妻と、子どもと暮らす。「湧き水に一番こだわっているのは私だから、必然的に私が水くみ当番になった」と汗をふいた。

 東海村の渡辺松夫さん(63)は、現場仕事の帰りに立ち寄った。「喉をからからにしてきたよ」。日立市の篠原敏男さん(51)は、妻の純子さんと孫とともに、楽しげに水をくんだ。「ここはカブトムシが飛んでくることもあるから、孫をつれて楽しみがてら来たよ」と敏男さん。

 日差しが和らいだころにやってきたのは、名水亭なか里の鈴木哲雄さん(65)だ。「仕事が一段落したからね。ここの水以上のごほうびはないよ」

〈シリーズ終わり〉

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう