水木のデパートが閉店 地域の暮らし支えて80年 呉服を扱った時期も
店頭に並んだ赤津さん夫婦

 日立市水木町の水木海岸に近い住宅街で、約80年にわたり地域の生活を支えた商店「いづみや」が、先月末で営業を終えた。

 同店は、正面看板にある「いづみや」の店名よりはるかに大きな「Mizuki Department Store(ミズキ・デパートメント・ストア)」の文字がトレードマーク。二代目店主の赤津勲さん(81)は、「デパートと言ってふさわしいほど、たくさんの商品を扱って、繁盛していたころもあったんだよ」と、笑顔で振り返る。

 勲さんの父親が創業した当時、取り扱っていたのは、まきと炭だけだったという。だが、高度経済成長期に入ると、店の雰囲気はどんどん変わっていった。

 夏の海水浴客や、近所にある泉神社の参拝客らも増え、同店の前は、地域のメインストリートの雰囲気。食料品の品ぞろえが増え、金物や文具も取りそろえた。呉服の取り扱いも始め、「このあたりの花嫁さんのほとんどを世話していた時期もあった」と勲さん。

 勲さんは、高校卒業後、東京の食料品店で修業を積んだ。その当時に出会った妻のとみ子さんは、東京の高島屋デパートに勤務していたという。とみ子さんは初めていづみやを訪ねたとき、「東京のデパートとはずいぶん違うと思ったけれど、夢でいっぱいの時代だったし、気にならなかった」と話す。

 地域のにぎわいが駅周辺や、国道沿いに移り、スーパーやコンビニが増えてくると、再び店の雰囲気が変わっていった。しかし、地域の交流の場という役割は失わず、「『買い物ついでのおしゃべりが楽しくて』という人が多くてありがたかった」ととみ子さん。

 今秋に、店頭の張り紙と手紙などで閉店する決意を告知すると、惜しむ声、ねぎらいの声が次々と届いた。便せん何枚にも及ぶものもあった。

 「振り返ってみると本当にあっという間。いろいろとあったけど、全部が良い思い出になるから不思議だね」と勲さん。とみ子さんは、「娘が、『これからは花壇作りを楽しみなよ』と本を贈ってくれました」とうれしそうだ。

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