霞ケ浦で養殖、県内外に出荷される「ナマズ」 なまず屋(茨城・行方)
いけすの前でナマズの刺し身を持つ野原さん

 行方市手賀の食用ナマズの養殖、販売「なまず屋」の野原吉伸さん(47)のセールストーク、「ナマズの刺し身は、フグにそっくりだよ」は、当初、単なる受け売りだったという。言葉に自信がこもったのは、仕事を始めて数年がたったころ。消防団の研修旅行先の大阪で、初めてフグの刺し身を食べてからだ。

 「ナマズそのものだと驚いた」

 

 同社は、食用ナマズの取扱量で、全国でも指折りの業者。秋以降が、出荷量が増える時期になるという。

 主な出荷先は県外。食文化の一つとしてナマズ料理が親しまれている岐阜県高山市と、埼玉県吉川市が、大半を占める。

 地元では、行方市観光物産館こいこいで、唐揚げ、照り焼き、西京焼きなどの加工品を販売しているほか、予約があれば同社で切り身の販売もする。

 

 野原さんの祖父は、霞ケ浦の漁師で、父の代からコイの養殖を始め、ナマズにも手を広げた。扱うナマズは外来魚のアメリカナマズ。30年前には霞ケ浦に定着していたという。

 漁師の網に入ったナマズを引き取って、霞ケ浦に設置した網いけすで2~4年養殖する。出荷の数週間前に水揚げし、井戸水をためた陸のいけすを泳がせる。

 

 ナマズの物珍しさから、テレビ番組の取材を受けることもあるが、「面白がってはくれるけれど」と、野原さんの顔は浮かない。野原さんの本音は、地元の人に、地元の味として親しんでもらいたいというものだから。しかし、多くの人の、「ナマズなんて」という先入観がなかなかぬぐえないという。

 近年は、アジア各国から来ている労働者たちが顧客になるという変化があった。ナマズは、各国の庶民の味だという。スープにしたり、丸焼きにしたりする調理法もある。野原さんは喜ぶ一方、「茨城の人たちに味が広がるきっかけになれば」という期待も込める。

 野原さんが、「ナマズの見方が変わるほどの別格の味」と表現する食べ方が、天ぷらだ。

 刺し身がフグで、フライは白身魚全般に似ていると表現される一方、天ぷらは、「何にも例えようがない味で、本当においしい」と、何度もうなずいた。

 切り身の店頭価格は1㌔2200円(要予約)。なまず屋☎︎0299・55・1691。

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