フォーミュラにかける青春  茨城大学学生フォーミュラ部・メンバー25人(茨城・日立市)
自分たちで作り上げたフォーミュラカーを前にするメンバー

 日立市中成沢町の茨城大学日立キャンパスの一角、コンクリート打ちっ放しの古い建物の中に、F1カーに似たレーシングカーが置かれてた。周囲には、そろいのポロシャツを着た学生たち。今年で発足20周年を迎える同大学学生フォーミュラ部のメンバーだ。

 フォーミュラは英語で、「規格」などの意味。フォーミュラカーは「車輪がむき出しになっている」などの規格にあったレーシングカーのこと。F1は、フォーミュラカーレースの頂点の部門となる。

 

 同部の活動は、フォーミュラカーを、設計段階から作り上げること。作り上げたフォーミュラカーは、毎年夏に開かれる学生フォーミュラ日本大会で、完成度が競われる。同大会は、「自動車技術会」が、日本のフォーミュラ技術の向上を願って開催しているもの。メンバーが囲んだのは、今夏の同大会にエントリーしたフォーミュラカーだ。

 学生フォーミュラ部は、全国の約80大学にある。茨城大学の学生フォーミュラ部は、全国的にも強豪に数えられる。22年大会では、参加65大学のうちの9位。今年は79大学中14位だった。

 

 メンバーは25人。入部の動機はさまざまだが、「青春を充実させたかった」と話すメンバーは多い。

 4年生の勝部駿さんは、3年生で入部した。以前から友人だった現チームリーダー(部長)の大盛克紀さんの影響だ。大盛さんは、同じ学年だが、2年時に入部していた。「(大盛さんは)勉強だって忙しいはずなのに、部活にも全力投球していた。仲間にも恵まれているように見えて、うらやましくなって」と勝部さん。

 

 設計作業の様子は、IT企業のオフィスさながらだ。それぞれがパソコンに向き合い、キーボードをたたく音のみが響く。設計が終わった後は一変、油まみれ。フレームを溶接でつなぎ合わせるところからが仕事。各パーツは、協賛企業などの力を借りて仕上げる。

 営業も、大切な活動。活動には、学生レベルをこえた資金が必要だからだ。地元の企業や、大手メーカーにも打診する。「社会人のみなさんに理解してもらえたときは本当にうれしい」とは、大盛さん。

 

 競技は、一般的な自動車レースのイメージとは違い、「静的審査」と「動的審査」に分けられる多くの種目で競う。静的審査は、制作に掛かった金額や、完成までのメンバーの役割分担が妥当であったかどうかなどが競われる。動的審査は、車ごとに、スラローム走行したり、加速性能や燃費効率を審査したりして競う。

 

 次回のマシンは、まもなく、ゼロから作り始める。ゼロからというのが大会のルールだ。

 春が作業の山場で、組み立ての期間となる。「春休み返上は当たり前」とは、数少ない女子部員、柴田紗里奈さん。

 次回の大会の目標は、9位。「若者らしく優勝を目指した方がいい」と言われることもあるが、目標設定も「静的審査」に影響する。

 「現実的な目標に沿った行動計画を立てて、着実に実行していく。確かなことの積み重ねだけが大きな結果を導くから」と大盛さん。

 

  • 茨城大学学生フォーミュラ部は、10月29日に日立市幸町の日立シビックセンターで行われる「第23回青少年のための科学の祭典」にフォーミュラカーとともに参加する。

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