描くことは生きることと同じ 元映画看板絵師の大下武夫さん
近作に囲まれる大下さん

 映画看板絵師として、最大時は水戸市内の11館の看板を担当していた大下武夫さん(78)は、引退から8年以上を経た今でも、精力的に絵を描いている。

 近作の画材は、カラーサインペン。「近所の文具店で買って来るんだけど、きっと、私がだれよりもたくさん買って、売り上げに貢献している」と笑う。

 作業場所でもある居間には、往年の俳優、花、馬、ライオン、トラ、鳥など、大小さまざまな作品がずらり。映画看板を思い出させる劇画タッチのものや、漫画風のもの、水墨画を連想させるものもある。

 「常に描いていたい。だから、常に描く題材を探している」。居間のテーブルには、コンパクトカメラが置いてある。「テレビできれいなシーンがでてくると、絵に描きたくなるから、写真に撮る。最高のタイミングで撮れることはほとんどないけどね」。ブーケを描いた小さな作品は、目の前にあったティッシュ箱の写真を描いたものだという。

 

夢の中でも描く

 現役時代も、「描くことが楽しくて仕方なかった」。映画館の看板は、3日に一度入れ替わることもあり、それが複数館になれば、深夜までの作業は当たり前のこと。

 その上で、「夢の中でも絵を描いていた」とは、妻の光枝さん。仰向けになって眠りながら、天井へ向かって絵筆を動かす仕草をしていたことがあったという。

 「私にとって、生きることと描くことは、同じなんだ」と大下さん。

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