350本の晴れ舞台 沓掛峠の山桜を守る会(茨城・大子町)
桜が開花すると、峠は華やぐ(写真は大子町の綿引勝春さんが、以前の見頃の時期に撮影)

 大子町大生瀬にある沓掛(くつかけ)峠は、同町の桜の名所の一つ。峠の斜面に、大小約350本の山桜が群生する。峠を管理しているのは、地元でつくる「沓掛峠の山桜を守る会」。「桜は集落の宝。今年も桜にとっての晴れ舞台の日が、近づいてきました」とは、会長の佐藤晋さん(=下写真、53)。

 

 同会では、今年の桜の花の見頃を、4月上旬と予想。準備は、3月下旬から始まる。まずは、峠への交通の案内板を各所に設置する。案内板は手作りしたもので、枚数は20枚以上。峠の場所は、福島県との県境に近く、車1台分の細道を進むため、「途中で不安になって戻ってしまう人もいるんです」と佐藤さん。

 開花が始まると、会のフェイスブックに写真を掲載して状況を伝える。弁当を広げて、のんびりとお花見を楽しんでほしいと、木製のベンチも増やす。来場者用に設置するトイレもきれいに掃除するのもこだわりだ。

 

 沓掛峠は、もとは馬や牛の放牧地で、その役目を終えた後は長い間ヤブに覆われていた。前会長で、佐藤さんの父の弘文さん(83)ら峠の所有者でこつこつと整備を始めたのが30年ほど前。

 山桜は、当初は大木の15本がメインだったが、整備する範囲を広げ、大木から種がこぼれて伸びた若木を植え替えるなどして数を増やしてきた。標高約450㍍の峠の頂上まで登れる遊歩道も設置、秋も楽しめる里にとモミジの木も植えている。

 整備を続け、桜の木が増えるごとに、見に来てくれる人の数も増えた。煮物などを持ち寄って開く恒例の花見会(コロナ禍のため今年は中止)には、集落の人たちのほか、一般の客も加わり、みんなで春の到来を喜び合う。

 

 夏と冬の2回行う草刈り作業は、どちらも1か月がかり。古い木が倒れたり、イノシシが穴を掘ったりと、峠の管理は苦労が多いが、「桜の花を見上げると、全部吹き飛んでしまう。今年も開花が楽しみです」と、佐藤さん。

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