クレーン車に積んだ大豊竹と参加者たち
鹿島地域に春を告げる2つの祭りの開催が近づいている。鹿島神宮(鹿嶋市宮中)の祭頭祭(さいとうさい)が3月9日、同神宮周辺で、派手やかな衣装を着た囃子人(はやしびと)が、樫(かし)棒を組み鳴らす「祭頭囃(ばや)し・春季祭」は、11日だ。
祭頭祭は、同神宮を代表する年中行事であり、春季祭と合わせて鹿島地域の人々の心のふるさとともいえるもの。関係者らは、昨春以降、丸一年かけて、準備に当たってきた。先の週末の2月25、26日にも、同市内2か所で2つの関連行事が行われ、参加者らは、本番を控える中での心の高ぶりも伝えた。
両祭りの運営は、年替わりで決まる同神宮周辺の2つの地区の人たちが中心になる。それぞれ「当番字」と呼ばれ、今年は、「沼尾郷」(同市沼尾)と、「粟生郷」(同粟生)。それぞれ20年以上ぶり。
25日に行われたのは、粟生郷の、「大豊竹(たいほうたけ)」の掘り出しと奉納。大豊竹は、「五穀豊穣(ほうじょう)」と「天下太平」を願う両祭りの五穀豊穣の面での象徴。同神宮周辺に生えたマダケに荒縄をびっしりと巻き付けて、巨大な稲穂のような姿に化粧して同神宮に奉納する。いわれは、諸説ある。
粟生郷の大豊竹の掘り出し作業
堀り出し作業には、粟生郷の男たち50人ほどが参加した。場所は粟生郷の板倉勝夫さん(85)方の竹林。竹の長さは15㍍で、同神宮へ運ぶ際はクレーン車が登場した。板倉さんは、「地域の一員として最高の誉れ」と喜んだ。
26日に行われたのは沼尾郷」の「廻(まわ)り祭頭」。地区住民が列になり、地区周辺で本番さながらに祭頭囃しを披露して回るもの。
衣装を着て楽しげな列の子どもたち
列の先頭で、よろい姿で肩車されていたのは、同地区の小学1年生、宮本成生(じょう)君。肩書きは「新発意(しぼち)」で、「大総督」とも呼ばれる。大総督とは、集団の統率者などの意味で、当番字それぞれで、4~6歳の子どもが選ばれる。両祭りの天下太平を願う意味での象徴だ。
宮本君を見上げた同年代の少年は、「じょう、かっこいい。でも、ずるいぞ!」とエール。宮本君は、サッカーが大好き。「大総督は、サッカーで言えば監督とキャプテンを同時に担当するようなもの。本番を考えるとどきどきするけど、頑張る」と頼もしかった。
◇
新シリーズ「いざ、春本番」は、この春に大舞台を控える個人や団体の姿を取材する。