大けがを経てPCで作画を継続 平松さん(茨城・水戸市)
今年の入選作と平松さん。デジタル画に絵の具で描き足す独自の技法で描いた

  水戸市の会社員、平松英男さん(58)は、不慮の事故で身体が不自由になったのを機に、パソコンを使って洋画を描き始めて4年。県芸術祭美術展覧会の洋画部門に出品を続けていて、4年連続で入選している。

 今年の入選作は、イタリアの都市・ベネチアの運河が流れる街並みを題材にした「夏の兆しベネツィア」。油絵のように表現しているが、実際には、キャンバスに印刷したデジタル画に、アクリル絵の具で描き足しをした。県展出品の際、デジタル画の可否を主催者に尋ねると、事情に配慮し、少しでも、本人が直接筆を入れることを条件に認めてくれたからだ。

 平松さんは、大学時代から独学で絵を描き始め、20代で二科展に入選、海外展にも入選した。

 2019年2月、雪の降った翌日に転倒し、頚椎(けいつい)を痛めた。両腕や右半身が動かせず、中心性頚髄(けいずい)損傷と診断され、3か月入院した。

 リハビリの日々で、「絵を描くことは、あきらめかけた」と、平松さん。そんな時、デザインを学んでいる長女が、「パソコンで絵を描いてみたら」と勧めてくれた。握力が弱い手でもマウスは動かせた。「絵を描く楽しみが戻ってきました」。毎日のようにパソコンに向かい、油絵のように描く技術を磨いた。その年の秋には県展に初挑戦し、入選を果たした。

 展覧会への挑戦には、「自分と同じような境遇の人たちに、勇気が伝われば」との思いも込めている。「来年は、入選の上の入賞を目指して、頑張りたい」

 

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