昨年“誕生”した本県産のブランド養殖マサバ、「常陸乃国まさば」の水揚げが始まった。12月20日の今シーズン初めての作業では、約650匹が水揚げされ、ひたちなか市、水戸市、大洗町の飲食店で、消費者の舌を喜ばせた。
今月も水揚げを予定していて、総数3000匹を目指す。水揚げした常陸乃国まさばは、その都度、飲食店に運ばれる。
養殖場所は、ひたちなか市の那珂湊漁港内のいけす。10メートル×10メートルの大きさのものが2面ある。
20日の作業には、養殖に深く関わる県立海洋高校の水産クラブ(部員14人)も参加した。参加した7人は、いけすのサバを網ですくい上げたり、水揚げしたサバの血抜きをしたりと、ずぶぬれになって作業した。2年生の大津直也さん(17)と鯉沼輝さん(同)は、「多くの人に味わってほしい」と笑顔を見せた。
常陸乃国まさばの特徴の1つが、生食が推奨されていること。天然のマサバは、沖合を回遊する際に食べるオキアミを介して、寄生虫のアニサキスが寄生することがある。常陸乃国まさばは、人の管理下で生産された稚魚を、人工飼料で育てることで、その可能性を下げている。
常陸乃国まさばを仕入れた大洗町の飲食店「味処(どころ)大森」は、刺し身にした常陸乃国まさばをおすすめメニューにした。きょうだいで食事に来た栃木県の照沼育男さん(69)と、同町の田山逸子さん(65)は、「食感が良くて、予想外にあっさり。茨城の名物になるおいしさ」と話した。
常陸乃国まさばの養殖事業は、県が主導して2022年に始まった。背景には、地球温暖化による海洋環境の変化に備えるという側面がある。
養殖には、えさやりなどが自動的にできる情報通信技術を使っている。出荷は流通試験との位置づけで、昨シーズンも行った。