行方市で暮らすモンゴル人のボルド・ゾルジャルガルさん(37)は、モンゴルの伝統的な家庭料理「ツォイワン」について、手作りのレシピ資料まで用意して丁寧に教えてくれた。メイン材料は、長さ5~7㌢ほどの平らな麺。小麦粉を素材に家庭ごとに打つのが普通で、ほかの具材と合わせて、スープの中で煮込む。
肉と野菜など具が多いのと、油を絡めてあることもあってボリューム十分。雄大なモンゴルのイメージとぴったりだ。
ボルドさんは昨年の11月から、地域おこし協力隊員として同市企画政策課に勤務。同隊の任命は、地域外の目線で地域を盛り上げるのが狙い。全国で行われているが、外国人隊員はまれだ。
行方市との縁は、昨年にモンゴル語の通訳としてやってきたのが最初。「自然がいっぱいで、みんなが優しくて、すぐに大好きになった」。同市の要望もあって任命につながった。
来日は、少しさかのぼって2015年。それ以前、モンゴルでは、音楽家として活動した時期もある。
音楽家だった当時、大相撲を好きになったのが日本との最初の縁。日本語の学習を始め、やがて、日本の科学技術への関心も深めた。石川県の大学院への入学を決めて、来日。モンゴル人の夫と2人の子どもも一緒に来た。
「実は、料理は得意ではないんです」。モンゴルでは、家事の担当に男女差はなく、夫のバーランフーさんは積極的に台所に立つタイプ。ツォイワンを教えてくれたのは、「日本とモンゴルの架け橋になりたい」という夢があるから。食文化も、両国で伝え合えたら楽しいだろうと思っているものの1つ。
この日、モンゴルのミルクティーも用意してくれた。味の決め手はモンゴル茶と、少しだけ足す塩。モンゴル茶は、まとめ買いして持ってきている。塩も、本当はモンゴル産が良い。湖で採取した塩で、「ひと味違うんです」。
放牧が盛んな国柄から、乳製品に自慢の品が多いことも話した。「かちかちに固いチーズがおいしいけれど、慣れない人は歯を折っちゃうかな」
行方市特産のサツマイモは、一家全員が大好きな食材だという。話しながら思いついたというのが、ツォイワンのアレンジレシピ。「サツマイモを足してはどうだろう? モンゴルと行方のコラボですね」
牛肉、タマネギ、ニンジン、ピーマン、小麦粉
〈作り方〉
①小麦粉に水を加えて練る。かたまりになったら15分寝かせ、表面にサラダ油を塗る。麺棒で延ばし、包丁で細切りにする
②フライパンに油を敷いて、食べやすいサイズに切った牛肉と、細切りにした野菜を炒めた後、水と塩を加えて5分間煮る
③湯が残る❷に❶を入れて、15分ほどしっかりと絡めて完成