ガルパン列車 間もなく旅立ち 鹿島臨海鉄道(茨城・大洗町)
青空の下を走るガルパン列車(鹿島臨海鉄道提供)


 水戸市と鹿嶋市を結ぶ大洗鹿島線(鹿島臨海鉄道・本社大洗町)の通称・ガルパン列車2両が、今年の9月までに順次引退する。これまでに4両のガルパン列車がデビュー。今、走っているのは3号車と4号車の2両で、9月を過ぎるとガルパン列車の姿が見られないことになる。

 ガルパンとは、2012年にテレビ放映が始まったアニメのタイトル「ガールズ&パンツァー」を省略したもの。高校生らが主役の物語で、大洗町が舞台。物語には、実在する風景や商店なども登場する。ファンは、同町を訪ねることも楽しみにしている。

 ガルパン列車は、車両の内外にガルパンのキャラクターなどが描かれた列車のこと。放送開始に合わせてお目見え。同町のガルパンブームの象徴的存在になった。

 

 ガルパン列車の運行の話は、アニメの制作側から持ちかけられたという。同社のガルパン列車担当・小松崎明さん(52)は当時、別の部署にいたが、その話は伝わった。「『一過性の人気』と思っていた」と笑う。

 同町のイベント内で行ったお披露目式で、いきなり驚かされた。

 全国からやってきたファンの数は、想像をはるかに超えた。水戸駅と大洗駅はパンク状態。電車に乗れず、その区間を歩いてくる人もあった。

 また、その翌日、アニメファンを別世界の人だと思っていた小松崎さんの心を一変させる出来事もあった。

 小松崎さんは、鉄道マンとして、前日の混乱に心を痛めていた。会社に届いたメールを、非難の内容であることを覚悟しながら開くと、「僕たちが押しかけて、地元を混乱させてすみません」といったガルパンファンからのねぎらいの声ばかりだった。

 やがて、“ガルパン旋風”は、大洗町全体を覆った。小松崎さんは、2号車以降のガルパン列車がデビューしていくことに、違和感を覚えなかった。


▲車内の装飾を解説する小松崎さん 

 

 引退の理由は、車両の劣化。定期点検を経て、本格的な“お色直し”が必要という判断になった。

 5月には、引退記念セレモニーが行われた。

 涙するファン、セレモニーが終わっても、帰ろうとしないファン。小松崎さんは、そんな姿を見ても、もう、驚かない。「車両にもファンにも感謝の気持ちでいっぱいだから」

 

 2両の運行表は、同鉄道のホームページで、週ごとに発表されている。通常の時刻表とは別の特別扱いだ。

 決まっているのは、3号車の引退が7月で、4号車が9月ということまで。多くのファンは、ホームページのチェックが日常になっているという。

 同鉄道の大谷勝則さん(51)は、「すばらしい最終運行になることを願っている。私もきちんと見送りたい」と話している。

 

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