茨城町立大戸小学校(児童数206人)の昼休みのグラウンドでは、野球グローブを手にキャッチボールをする児童の姿が、当たり前。女子児童が混じることも珍しくなく、最近は、バットも用意して、簡略ルールの試合を楽しむ様子もある。
始まりは、昨年の11月。児童の1人が、テレビニュースを受けて、篠原みち代校長(59)に、次の質問したこと。「アメリカのメジャーリーグの大谷翔平選手が、日本の全部の小学校にグローブをプレゼントするって聞いた。僕たちも使えるの?」
校長は、その話が自分の耳にも届いていることを話した上で、「どんなふうに使うか、みんなでルールを決めてみたら」と指示した。よろこんだ児童たちは、各クラスの代表がそろう代表委員会で、曜日代わりで、学年ごとに使うことを決めた。
年が明けて、3つのグローブが届いた。一つは標準的な児童用グローブ。もう一つは左利き用。もう一つは、低学年用だ。大谷選手からの「野球しようぜ」というメッセージが添えられていた。
児童らが使いやすいようにと考えた篠原校長は、PTAらと相談して、6個のグローブを追加購入した。
グローブは、職員室に保管してある。児童らは昼休みが始まるや、それを引き取りに来る。
子どものころからの野球人という西川真登教諭(40)は、児童たちの様子を見て、「自分の世代とは違う」と感じている。西川教諭の子ども時代と言えば、イチロー選手がぐんぐん知名度を上げていったころ。メジャーリーグに行くとなったときには、もう大騒ぎだった。
今の子どもたちは、大谷選手の活躍をよろこんではいるが、「メジャーリーグということを特別視はしていない。日本人がメジャーリーグで活躍することを当たり前のこととして受け止めるようになっているのかも。児童たちの世界が大きく広がっている」と西川教諭。
バットを持ち出すようになったのは最近のこと。バッティングティーと呼ばれる棒の上にボールを乗せて打っている。今シーズンの大谷選手が、打者に専念していることも影響しているかもしれないという。
西川教諭は、その様子を見ても、自分たちの世代との違いを感じている。「ヒットを狙う児童はいない。みんな大谷選手のような豪快なホームランを狙っている」と笑った。
6年生の小林啓太君は、「小さいころにお父さんとキャッチボールをしたことがあったけど、グローブが小さくなっちゃってからはしていない。大谷選手の活躍をテレビで見て、野球に興味が出ていた」と話す。
6年生の郡司陽菜乃さんは、「大谷選手がグローブを贈ってくれて楽しみが増えた。大谷選手、本当にありがとう」と話した。