【前向きに 新しい生活様式③】これからもプリンとともに 休業中のキャンプ場の名物を販売する女将〈大子〉
竹内商店でホワイトプリンを持つ竹内さん。プレーン、カフェオーレ、ココアなどの定番5種類のほか、季節限定品がある。1個220円~

 昨秋の台風19号で被災し、今春の再開を目指していた大子町頃藤の上小川キャンプ場が今も休業中なのは、新型コロナウイルスの影響によるものだ。復旧のための建築資材の流通が滞り、工事が遅れたことなどが理由だ。

 それでも、キャンプ場の女将(おかみ)の竹内恒子さん(62)が明るいのは、支援者たちの優しさと、キャンプ場名物の手作りスイーツ「ホワイトプリン」に込めた思いがあるから。

 

 上小川キャンプ場は1965年、竹内さんの亡き祖父が始めた。緑豊かな久慈川のほとりに広がり、釣りや水遊びが楽しめるのも魅力。5月のゴールデンウイークと夏休み期間を中心に、家族連れらでにぎわってきた。

 キャンプ場の歴史は、水害との歴史ともいえる。台風による水害にあったのはこれまでに3回。

 昨秋の台風では、38棟あったバンガローのうち35棟が流出するなど、過去最大の被害を受けた。翌朝、キャンプ場の様子を見に行ったときは、「驚きと悲しさで、言葉が出ませんでした」と竹内さん。

 

 ホワイトプリンの販売を始めたのは、2011年の夏。当時、同年3月の東日本大震災による風評被害で、5月は客が例年の3割減になっていた。夏にはさらに水害もあった。

 ほんの少しでも売り上げの足しにしようと、竹内さんが高校時代から35年間作り続けてきたデザートを商品化した。幼い頃、亡き母が作ってくれた牛乳かんのおいしかった思い出を重ねながら工夫したもので、お盆や正月など親戚が集まる日には、必ず作ってきた。牛乳のコクがあり、素朴で優しい味わいが特徴だ。

 一般に受け入れられるかどうか心配だったが、管理事務所に並べると、食後のデザートにと購入する人が増えた。

 

 ホワイトプリンは現在、JR水郡線上小川駅前にある竹内商店で販売している。同店は、竹内さんのもう一つの家業で、地域向けに雑貨や食品などを取り扱っている。昨秋の台風後は休業していたが、今年に入ってから週に3日のみ営業している。

 1月に「新春感謝祭」という小さなイベントを開くと、キャンプ場の常連客らが次々に訪れてくれた。多くがホワイトプリンを購入、「やっぱりこの味だね」などと喜んだ。近年は、キャンプ場の客以外にもホワイトプリンのファンが増えている。

 小さなプリンでは売り上げの大きな足しにはならない。新型コロナという新たな問題も加わった。先を思うと不安は尽きないけれど、「たかがプリンだけど、されどプリン。このプリンがあれば、なんとか頑張れると思えるんです」

 竹内商店はJR水郡線上小川駅前にある。現在は金、土、日曜のみ営業(不定休あり)。時間は午前10時~午後5時。同店☎︎0295・74・0006。

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