聞いて冷んやり 語り継がれる茨城の幽霊話(茨城・ひたちなか、鹿嶋)
「だんご坂のゆうれい」の話を布絵にしたものと、吉成さん

 怪談話といえば、夏の風物詩の一つ。茨城の民話にも、背筋が冷たくなるような怖い話はあるのだろうか。語り部の2人に聞いてみた。

 

 「怪談というほど怖くはないけれど、幽霊が出てくるので、子どもたちは喜んでくれますよ」。ひたちなか市の国営ひたち海浜公園が拠点の常陸みんわの会代表の吉成智枝子さんは、常陸太田市にある坂「十王(じゅうおう)坂」に伝わる伝説「だんご屋の幽霊」をもとにした話「だんご坂のゆうれい」を教えてくれた。

 「坂にあるだんご屋に毎日、日暮れになるとやつれた女がだんごを買いに来た。ある日、だんご屋の主人がこの女の後をつけていくと、寺の近くのお墓のあたりで姿を消してしまった。すると、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。赤ん坊の母親が、幽霊となってだんごを買って食べさせていたのだ・・・」というあらすじだ。

 吉成さんは、夏のお話会では、「ちょっと涼しくなるように」と、よくこの話をするという。

 

 鹿嶋市の鹿嶋語り部の会代表の五喜田敏子さんが教えてくれたのは、同市の高松地区に伝わる漁師の話「幽霊船」。

 

手作りの紙芝居を持つ五喜田さん、根本千恵子さん、佐藤和江さん手作りの紙芝居を持つ五喜田さん(中央)と、会のメンバーの根本千恵子さん、佐藤和江さん

 

 「むかしむかし、海が大しけになると、『おっかねぇ鬼が出る』という言い伝えがあった。鬼とは、海や川で亡くなった人たちの魂のこと。ある日、海に見慣れない船が現れた。帆はボロボロ、人はおらず、周囲には火の玉が。『幽霊船じゃぁ』と、大騒ぎになって・・・」という内容。

 五喜田さんらは、民話をもとに紙芝居を作成。鹿嶋なまりの言葉で上演している。

 地域の民話は、大人から子どもに口伝えで語られてきた。娯楽が少なかった時代の楽しみの一つだった。

 「伝えられた話をもとに、語り手の持ち味が生かされた語りが魅力的」とは、吉成さん。「民話を語って、家族や仲間と楽しく、涼しいひとときを」と、五喜田さん。

 

■図書館で、もっと冷んやり

 

「おおた坂物語」

 吉成さんおすすめの「だんご坂のゆうれい」は、常陸太田市の市民グループ「まいづる塾」が2007年に発行した冊子「おおた坂物語」に、「だんご屋の幽霊」として掲載されている。同市立図書館に寄贈されている。

 

「鹿嶋の民話」

 五喜田さんおすすめの「幽霊船」は、鹿嶋市が2008年に発行した本「鹿嶋の民話」に収録されている。同市内の図書館などにある。同集には、市内の民話49話が収められている。

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