歴史が生んだ地域の宝 軍民坂湧水
軍民坂湧水で、小田倉さん(左)と薗部さん

 水戸市上国井町の軍民坂湧水(ぐんみんざかゆうすい)は、いわれのある軍民坂という坂の途中にある。周辺には田園地帯が広がり、映画のロケ地になった七ツ洞公園が近い。

 水くみ場は、直径1㍍ほどのコンクリート製の円形の枠の中。毎週水をくみに来ているという同市双葉台の名波義弘さん(74)は、「うちの飲み水は全部ここの水。ご飯もとってもおいしく炊けるよ」。

 

 軍民坂の歴史については、上国井町区長で、地元の歴史研究会「国田歴史学習会」会長の小田倉康家さん(69)が詳しい。

 軍民坂が開通したのは1935年。それまではがけになっていて、がけの上に田畑を持つ住民は、遠回りの道しかなかったため、苦労していた。

 地域でがけを切り開こうと工事を続けていたが、作業は困難を極め、予算も底をついた。そこで、当時の区長が村長を動かし、旧陸軍水戸工兵第十四大隊に援助を陳情した。その陳情がかない、救農土木事業として開通工事が行われた。坂の名称は、軍と民が協力したことに由来する。

 湧水も開通工事をきっかけに生まれた。がけには、三国の滝と呼ばれる滝が流れていたが、開通工事を機に水脈が変わり、坂の途中から湧き出るようになったという。市の上水道に切り替わるまでは、この湧水を利用した簡易水道が整備されるなど、地域を支えてきた。三国の滝には、水戸藩2代藩主の徳川光圀が詠んだ和歌も伝わっている。

 

 現在は、地元でつくる「上国井地域保全会」が、湧水地の清掃や水質検査のほか、周辺の草刈りなどを行って大事に守っている。同会代表の薗部浩さん(69)は、「湧水を守ることが地域をつないでくれている。昔も今も地域の宝です」。

 駐車場はないが、30㍍ほど東側に数台とめられる場所がある。

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