潮来市に住む台湾出身の劉宜蓁(リュウ・イーチェン)さん(46)が教えてくれたのは、「炒米粉(焼きビーフン)」。米粉の麺・ビーフンを野菜や肉と炒めた、日本の焼きそばのような料理。
友人に「台湾料理が食べたい」と言われると、必ず焼きビーフンをつくるという劉さん。「日本の焼きそばと同じように、台湾の庶民の味。冷めてもおいしいのもいいところ。おしゃべりに夢中になっても大丈夫なのよ」
本場台湾の味に近づけるコツは、3つ。
1つは、台湾製の乾燥ビーフンを使うこと。米粉麺はベトナムやタイなど各地にあるが、それぞれに太さやコシなどに違いがあるという。劉さんは台湾・新竹地方で作られた「新竹米粉」がお気に入り。弾力があり、つるっとしていて食感が良いそうだ。
2つ目は、干しシイタケのもどし汁も使うこと。味に深みが出る。
3つ目は、「基本を押さえたら、あとは自由に」。野菜は冷蔵庫の残り物で十分。味付けも「分量を計ったことはないの」。この懐の深さも、愛される理由の一つだ。
劉さんの実家は、台湾の屋台グルメ「牛肉麺(ニュウロウメン)」の人気店。
店では、夜は牛肉麺、朝は肉まんを販売していて、子どものころはきょうだい4人とも、学校が終わるとまっすぐに店へ。
劉さんは、キャベツの千切りと皿洗いの担当。「友だちと遊びに行けなくて、キャベツを見ると泣きたくなったことも・・・。でも、おかげで洗い物は得意よ」
焼きビーフンは、そんな忙しい家族の、つかの間の休日に食べた。特に、親戚など大勢が集まるときに、母の焼きビーフンは定番だった。「セロリが入ったさわやかな味。おいしく、楽しい思い出が詰まっています」
劉さんは2年ほど前から、手作り冷凍ギョーザの販売を始めた。きっかけは、夫の良雄さんが病気で亡くなったこと。家計を支えるためだ。
劉さんが作るギョーザは、小籠包(ショーロンポー)のように、スープをあんに含ませている。中学生の息子も、焼きビーフンはもちろんギョーザも大好物だ。今後、鹿嶋市で店も開く予定。
目標は父。「忙しくても家族のために一生懸命で、みんなに優しい。父の店のような場所にしたいです」
台湾製の乾燥ビーフン、干しシイタケ(水で戻しておく、戻し汁も使う)、干しエビ、豚バラ肉、ニンジン、タマネギ、キャベツ、塩、コショウ、オイスターソース、フライドエシャロット(市販品。なくてもいい)
〈作り方〉
①ビーフンはゆでて水を切り、はさみで食べやすい長さに切る
②フライパンに油を入れて、細切りにしたシイタケと豚バラ肉を炒める
③野菜と干しエビを加える。シイタケのもどし汁を加える(2人分で100cc程度)
④調味料で味付け
⑤ビーフンを入れてよく混ぜ、フライドエシャロットを適量加え、全体に味が回ったら出来上がり。
(シリーズ終わり)