
鹿嶋市粟生の市どきどきセンターで、今年の春に同市の豊郷地区で出土した馬の骨(下写真)のクリーニング作業が進められていた。クリーニングとは、絵筆などを使って丁寧に進める清掃作業のこと。作業終了後、必要だと判断されれば、細かな調査のために、専門機関の元に届けられる。現段階では、中世(戦国時代)に農耕用に使われた馬の骨と見られている。
鹿嶋市内で馬の骨の出土は珍しくないという。今回は、下顎(あご)と歯のみが出土しているが、馬の全身の骨が出土する例もある。
周囲の土の状態などから考えても、馬は丁寧に埋葬されたものであることが確実だという。同センターのセンター長、石橋美和子さん(53)は、「いにしえの人たちが、一緒に働いてくれた動物に、深い愛情と感謝の思いをもっていた証しではないでしょうか」と話す。
出土した場所は、道路を拡幅するにあたって調査された。周囲は、農地などとして活用されているため、範囲を広げての調査はできないが、ほかにも多くの遺跡が隠されているといわれる。古代の豊郷地区には、神郡とよばれた古代の鹿嶋の役所があった可能性があるためだ。
石橋さんは、「こうした出土品を見て思いをはせると、見慣れた地域の景色の印象も変わってくる」と話す。