秋は、川霧のシーズンでもある。秋の川霧を生み出しているのは、放射冷却による寒さと、川の水温のギャップ。
放射冷却とは、夜の晴れた空が、日中に温められた大気を、上空のかなたへ放出する現象。地表近くは、厳しい寒さに覆われるが、川の水温はすぐには変わらず、比較的温かいまま。すると川面から水蒸気が舞い上がる。水蒸気は、舞い上がるやいなや、冷気にさらされて、霧粒に変化するというのがメカニズム。
常陸大宮市の大貫亘さん(69)は、本県の川霧の写真の第一人者。同市の三王山から撮影した那珂川の川霧が雲海になって広がる代表作は、東京で開いた写真展で発表したほか、写真集にも収めた。その写真の影響もあって、この時期は、早朝の三王山に多くのカメラマンの姿がある。
大貫さんの今の撮影場所は、奥久慈地区で、久慈川に立ちこめる川霧を狙っている。条件の良い日には、午前2時に起きて、カメラを握る。「美しい風景は県内の各地にある。それを広めたい」。数年から10年以内に、何らかの形で発表したいと考えているという。