鹿嶋市の県道255号沿いにあるスーパー「コミュニティーストアミズノ」は、開店して40年あまり。客らの“井戸端会議”が、絶えず展開する店内は、地域密着型スーパーという表現がぴったり。鹿島灘産のタコをブランドダコ「鹿島だこ」として県外に知られるまでに育てた取り扱い店としても知られる。
店は、店主の水野明善さん(67)の祖父が立ち上げた。当初は、小さな八百屋だったという。明善さんは、「地域のニーズに応えて柔軟に商売してきただけだよ」。
明善さんが店に立ち始めたころは、鹿島開発の最中。通りには、日用品を扱う店がずらりと並び、コンビナート建築現場へ向かうダンプカーが、土ぼこりをあげた。客の多くは県外から仕事を求めてやってきた人たちだった。
「あのころは、何もかもがめまぐるしく変化していた」と明善さん。そんな中で、「地元」をよりどころにしようと考えた結果が、鹿島ダコのブランド化につながった。
「この辺の人はおいしく食べていたけど、流通はしていなかった。県外からの移住者がたくさんいるんだから、みんなに食べてもらおうと思って店に並べたんだ」と、明善さん。
いま、長男、明宏さんと、明宏さんの妻の千絵美さんも店に立つ。明宏さんのアイデアで店に並ぶのは、1パック1円の地元産生シラス。「地元の良いものを、より多くの人に伝えたい」と明宏さん。地元をよりどころにする姿勢は、しっかりと伝承された。
明善さんと千絵美さんは、実の父娘であるかののように息がぴったり。「本当にいいお嫁さんに来てもらった」と明善さん。そう思わせたエピソードのひとつに、明善さんの母親から、ごさい漬けの漬け方を学んだことがある。ごさい漬けは、新鮮なサンマをダイコンなどと漬け込む鹿島灘の冬の郷土料理。
ダイコンの大きさをミリ単位で指示されるなど、3、4年つきっきりの指導の後に、ようやく独り立ちを許してもらった。いまでは、店に並べるや売れてしまう人気品で、「ありがたいです」と千絵美さん。