はんこ店店主がユーチューブデビュー アナログをネット配信
動画では、ホワイトボードに文字を書いて解説している

 日立市幸町ではんこ店「スタンプナメカワ」を営む滑川裕さん(53)は先月、ユーチューバーデビューした。ユーチューバーとは、インターネット動画配信サイトのユーチューブでオリジナル動画を配信する人たちだ。

 

◇篆書ベースの文字解説

 すでに20本余り配信している動画のタイトルは「はんこ屋さんの文字解説」。滑川さんは、手彫りではんこを制作する昔ながらのはんこ職人。動画は、修業時代から勉強を続ける篆(てん)書体の知識を基礎に、身近な漢字の成り立ちを解説する内容だ。

 東日本大震災発生から丸9年たった今月11日に配信した動画では、「絆」という文字を解説。内容は次のようなものだ。

 絆という文字は、「糸」と「半」が組み合わさってできている。糸は「綱」を表し、半は、いけにえの牛を半分に分けるという意味があったという。それが転じて、牛をつなぐ綱を絆と呼ぶようになり、やがて、現在の意味が生まれた。

 人名について解説している動画もある。「鈴木」の解説はこう。

 「鈴」は、「金」と「令」で構成。金は金属一般を指し、令は人がひざまずいて神に祈りを捧げる様子を現した。「木」は、ほぼ現在と同じ意味。「鈴木」とう名字が全国に広まったのは、熊野神社の信仰が広まるのと関連しているという説も紹介している。

 原動力は、「文字の楽しさや、文化としてのはんこを再認識してもらいたい」という願いだ。

 手彫りが当たり前だったかつてのはんこは、すべてが一点物で、本人認証のための道具として大きな役割を果たしたが、機械彫りが一般化した現在では、その価値が薄れている。本人認証の道具としてはんこを使う制度も、見直される傾向があるという。

 

◇はんこは自分の分身

 滑川さんは、「時代の流れは変えられないが、はんこの価値は本人認証だけではないと思う。深く理解した愛着のある文字を、こだわりを持って彫り込んだはんこは、自分の分身とも言える宝物。せめて家庭に1つあってもいいのでは」と力を込めた。

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