【梅雨点景】アユと人をつなぐ 久慈川漁協組合長・高杉さん(茨城・大子、常陸大宮)
久慈川の川辺(大子町大子)で川底の石を指さす高杉さん。石には、アユがコケを食べた跡があった

 5月の末日、薄曇りの空の下で、心配そうな面持ちで久慈川を見つめていたのは、久慈川漁業協同組合の組合長、高杉則行さん(77)。川辺は大子町の久慈川と押川の合流点近く。高杉さんの自宅からも近い。

 「ほらあそこ、アユがなめた跡が見えるでしょ!」。指さした石は、一部が色が違った。黒々とした場所が、アユが好物のコケを食べた跡だという。

 心配顔は、アユ釣りの解禁日の6月1日を前に、荒天の日が続いたため。「解禁日はおまつりだから、最高のコンディションで釣りを楽しんでほしい。川辺にお赤飯や御神酒を持ち込む愛好家も多いんだよ」

 

 アユの多くは、遡上(そじょう)という長旅を終えて、それぞれの居場所を見つけたころ。これから、コケなどを食べて成長し、秋頃になると、少し川を下り、常陸大宮市周辺で産卵。1年の生涯を終える。

 卵は、2週間ほどでふ化して、糸くずより小さな赤ちゃんアユの姿で海へ下る。4月頃から、遡上を始める。

 

 高杉さんらの役割は、営みを重ねるアユと、釣り人たちの接点を実りあるものにすること。そのことを通して、久慈川の豊かな環境を、後生につなぎたいという願いがある。

 信念は、「人が、自然への関心を無くしたときに、自然は失われてしまう」というもの。

 

 久慈川は、生息するアユのほとんどが天然ものという豊かな川だが、環境は悪化している。水質が悪化して、アユの産卵に必要な柔らかな川底が目詰まりしてしまっているという。同漁協は、大型重機で川底を整えて、アユの産卵数を向上させることにも成功している。

 日頃から取り組んでいるのは、「ありふれたことだよ」。アユ釣りの指導をしたり、自身が、アユ釣りを楽しむことも、「“願い”に背中を押されてのことでもある」と笑った。

 

 高杉さんの祈りが通じてか、6月1日は好天に恵まれた。久慈川各地の釣り場を巡った高杉さんは、「たくさんの笑顔に出あえた。釣果もよかったし、良いシーズンになるよ」と話した。

 

 

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