鹿嶋市武井の猫カフェ「ジュエリー」は、春先以降の新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄(ほんろう)された後、再び歩き始めている。
約2か月間にわたって休業し、移転を経た後、6月に営業を再開。オーナーの山本さおりさん(49)は、「今でも軌道に乗ったというのには遠い。でも、猫たちは安定してきているかに見える」とほほえむ。
店舗は、山本さんの実家を改装したもので、利用者も猫も、自宅にいるかのようにリラックス。利用者数を制限するなど、新しい生活様式に対応した営業をしている。
新型コロナの影響が表面化したのは3月。当時、神栖市にあった店は、開店から5年目を迎えていた。春先はにぎわうはずのシーズンだったが、ぱたりと客足が止まった。
「不要不急そのものの店ですから」と山本さん。
売り上げ的な余裕がある営業内容ではなく、安易に休業はできなかった。感染防止に注意を払いながら、ぎりぎりの営業を続けると、中傷めいた電話などが相次いだ。
山本さんは、捨て猫の保護活動にも取り組んでいる。猫カフェは、そのPRと資金集めの場所でもある。
子どものころから猫が好きで、20代から保護活動に関わった。好きだからこそ心が折れてしまうこともあった。持病のある猫などの死に向き合ったときだ。
今回、コロナ禍をきっかけに受けた中傷の中には、「あなたのような無責任な人に飼われる猫がかわいそうだ」など、実情を踏まえないものも多かった。心を痛めた山本さんは、猫の死以外の理由で初めて、活動の休止を考えたという。
実家に移転する構想はもともと温めていたが、「今回の騒動で逆に覚悟を決めたところもあって」、借金して施設を充実させた。
温かな言葉を寄せてくれる人も多かったし、一緒に暮らす猫たちも慰めてくれた。でも、「立ち直るしかなかった」という一番の理由は、過去に落ち込んだときと同じ。山本さんの助けを必要とする猫が絶えないからだ。
活動をスムーズにするために、SNSで、募金や里親を求める発信を強めたり、クラウドファンディングに挑戦したりもした。活動が知られると、協力者が増える一方、届けられる捨て猫の数が増え、出費がかさむ。一種のジレンマではあるが、「ずっとその繰り返しですから」と明るい。
猫カフェの営業には、新しい生活様式自体がジレンマでもある。感染拡大防止は大前提だ。その上で、「収益を上げることができるのか?」。答えは見つけられていない。
それでも笑顔だ。「とりあえず、目の前の猫たちと猫好きの人たちに幸せになってもらえれば一歩前進」
新シリーズでは、新型コロナウイルスに翻弄されながらも、前向きに生きる人たちを追う。
▽筑波銀行神栖支店 普通口座 1268796
▽ゆうちょ銀行 普通口座 10600-51291731