鉾田市上釜の「器ギャラリー 月(つき)カフェ」は、すでに9月の予約が入り始めているという人気カフェ。店の魅力は、窓の先約100㍍に眺める鹿島灘。切り盛りするのは、首都圏で長年にわたってすし店を営んだ月城慶一さん(73)と、よう子さん(74)夫婦。慶一さんが、茨城の海の幸を握るすしや、海鮮丼、シーフードピザなども、魅力だ。
客席からの眺め
開店は10年前。「こんな日々になるなんて予想もしていなかったけど、やっぱり仕事が好きだから」と2人。
2人の元の住所は千葉県我孫子市。開店の6年前に、まず慶一さんが店のある場所に暮らし始めた。目的は、いわゆる田舎暮らしで、よう子さんは、自分の仕事の都合でタイミングがずれた。
「趣味の陶芸にゆっくりと励む日々だった」と慶一さん。空き地だった場所に家を建てると、陶芸用の窯を自作。それが上手くいくと、ピザ窯と薫製窯も作った。
作陶ははかどった。「それでも、ここでの暮らしは時間が余った」。ある日、懇意になった近所の農家に、「敷地の一部を畑にしたい」と相談したのが転機。農家の返事は、「野菜なら、うちのをあげるから、都会の人らしい何かをやって。ここは海が眺められるからレストランなんて最高じゃない」というものだった。
全席シーサイドビューの客席フロアは、畑にするはずだった場所。基礎を含めてすべて、慶一さんがDIY(日曜大工)。2階は、大洗や鹿嶋を見渡すオープンテラスだ。
営業は4~11月限定だが、シーズンオフも作陶作業に忙しい。仕上げた器類は、店で1シーズンだけ使用し、次のシーズンには販売するためだ。
鹿島灘には、助言をくれた農家や、客らと同じように感謝を向ける。「毎日見ているけど、まったく飽きることはない。ほとんどのお客さんは、フロアに入るなり歓声をあげる。私は、『すごいでしょ』とにんまりしています」と、よう子さん。
営業は午前11時~午後3時。火、水曜定休。同店☎︎0291・37・0882。