天日が育む「八千代おこし」 永寿堂(茨城・高萩)
製造工程を解説する沼野さん

茨城再見聞

 1913(大正2)年創業の菓子店、永寿堂(高萩市安良川)の店舗奥の広場で、木枠に敷き詰められた米粒が、きらきらと輝いていた。同店の創業以来の名物菓子、「八千代おこし」の製造工程の1つの、ふかしたもち米の天日干しだ。

 塊になっていたもち米を、天日干しで乾燥させては、ばらすという作業を繰り返して、一粒一粒をつまめるようにする。天日干し期間は、2週間に及ぶという。その後、釜でいって、特製の水あめで固めるなどして、完成だ。

 八千代おこしは、東京浅草の雷おこしなどに代表される「おこし」と呼ばれる和菓子の一種。天日干しの効果もあって、軟らかく食べやすいのが特徴。

 現社長の沼野辰三さん(82)の祖父が、大阪でおこしを販売していた記録がある。祖父は、親族の誘いを受けて、常磐炭鉱関係の仕事に就くために、同市へ転居した。八千代おこしは、大正天皇の即位を記念して作り始めた。

 製造工程の多くは機械化したが、天日干しだけは昔ながら。「天日が育むおいしさを味わって」と沼野さん。

 同店☎︎0293・22・2002。

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