常陸太田市高柿町の阿久津富夫さん(66)は、新型コロナウイルスの1日も早い終息を願いながら、晴れた夜には毎日、空を見上げている。阿久津さんは、キャリア50年以上のアマチュア天文家。本来であれば今頃、フィリピン・セブ島に自分で建てた天体観測所で、夜空を見上げていたはずが、新型コロナの影響で、予定が変わった。だが、「時期がずれただけ。必ず実現する」と決意は変わらない。
セブ島には、医療機器メーカーの駐在員として長年滞在し、当時から星を見つめていた。阿久津さんによれば、セブ島は、季節風などの関係で、日本の多くの地域より、はるかに観測条件が良いという。
観測所設立の夢は、駐在員当時に抱いたもので、当初は、昨年3月に退職後、4月に移住する予定だった。
昨年の移住を延期した後には、クラウドファンディングを立ち上げた。観測所や、開始後の活動を一層、充実したものにしようという挑戦だった。クラウドファンディングは成功したが、コロナの状況は変わらず、今年春を見込んだ移住も再延期した。
阿久津さんの天文家としての力量は、全国発売される天文専門雑誌に頼りにされるほど。先日も、雑誌「星ナビ」に8㌻にわたる阿久津さんのレポートが載った。
活動の場は、インターネット上にもある。世界の天文家が、それぞれに撮影した写真と情報を公開するサイトやSNSがあり、阿久津さんも日々、参加している。ただし、世界という土俵では、「日本で撮影したものでは、大きな反響は得られない」と悔しさもにじませる。
観測所に持ち込むのは自作の天体望遠鏡。阿久津さんが専門とする木星なら、表面に浮かぶ気流のうずの大赤斑(だいせきはん)の細かな変化まで観測できる性能だが、筒の部分は大型の鍋を4つ連結させて作っているという。「アイデアも技術のうち」と阿久津さん。今は、同市の自宅裏に設置してある。
コロナが終息し次第、行動を始め、「移住後は、セブ島に骨を埋めるつもりで活動する」と阿久津さん。観測所は、一般の人たちも利用できるものにするという。
「多くの日本人に訪ねてきてほしい」