約10年前に那珂市で栽培が始まったパパイア「那珂パパイヤ」は、今や全国30都府県で栽培されるまでに広まっている。かつては、同市を北限としていたが、今では青森県にも生産農家がある。
那珂パパイヤは、野菜として食べるパパイア(野菜パパイア)で、果物のパパイアとは収穫するタイミングが違う。野菜パパイアは、完熟する前の緑色のまま収穫する。
パパイアは南米原産で、大航海時代にコロンブスが世界各国に広めたとの説もある。日本では長い間、沖縄県などの南国でのみ生産され、産地では野菜パパイアも根付いたが、ほとんどの日本人にとっては、黄色くて甘い果物という認識だった。
南国以外での栽培技術を確立し、それを惜しみなく広めたのが、那珂パパイヤを栽培、出荷する「やぎぬま農園」(同市菅谷)の栁沼正一さん(69)。精力的な姿は、野菜パパイアを広める現代日本のコロンブスとも言える。
野菜パパイアの特徴は、栄養素の高さ。特に酵素が多く、体内で消化を助けるほか、調理前の肉類をやわらかくする力も持つ。調理法は、生、煮物、炒め物など幅広い。
野菜として栽培することで、栽培が容易になり、土地や労働力も有効利用することにつながるという。
栁沼さんは、海外駐在員としてアジア各国で暮らしていた当時に野菜パパイアに出合った。当時の印象は、「みんなが元気なのは、これのせいかと思った」というもの。
40代半ばで、農業関係の仕事に移り、将来性のある作物を探す中で、野菜パパイアと向き合うことになった。
「行動力だけが自慢」と栁沼さん。野菜パパイアの可能性に気付くと、独自に、栽培方法や採算性、また、普及させることで社会にどれほど貢献できるかについて研究し、やがて会社を辞した。
最初は九州で栽培に成功。すると、日本中で食べてもらうには東京に近い方がいいと考えた。目を付けたのが妻の実家がある那珂市。移転したのが11年前。以来、「妻は東京、私は妻の実家で単身赴任」と笑う。
野菜パパイアの収穫期は、今月から11月末まで。やぎぬま農園でも、つやつやとした実が、次々にもぎ取られている。
今年の“航海”も順風満帆といいたいところだが、かねてからの悩みは消えない。それは、予想したほど食べてもらえないこと。「どんなにいいものでも、新たな食習慣を受け入れてもらうのは難しいもの」
顔を曇らせた栁沼さんだが、すぐに探検家の顔を取り戻した。「採れたて野菜パパイアのおすすめ調理法は、『パパイア鍋』。おいしいし、体に良いし、ほかにもいいことだらけ」
「パパイア鍋」の例
同農園☎︎029・219・8127。