ひたちなか市平磯町の海産物店「大喜(おおぎ)や」の大内正光さん(71)宅のみそ汁には、この時期、目の前の海岸で収穫された海藻のフノリが入る。
フノリと、3月から販売が始まったヒジキを持つ大内正光さん
みそ汁を仕上げた鍋の中に追加し、ひと煮立ちさせてもいいし、おわんによそった後にのせてもいい。フノリは、熱が加わると一瞬、鮮やかな緑色に変わる。「この緑色と、ふわりと漂う磯の香りが魅力。今年も春が来たなと感じます」と、妻の孝子さん(71)。
フノリの漁期は、1月下旬~3月上旬頃。岩に付着したフノリが新芽を出すタイミングだ。収穫するのは、その新芽。漁を許されるのは、地元の磯崎漁協が出す鑑札を持つ人のみで、漁ができる日も決まっている。
大内さんの店では、収穫されたフノリを買い取り、加工して販売している。乾燥させたフノリのほか、5月頃までは乾燥前のみずみずしいフノリを販売。大内さん宅のみそ汁も、この時期は乾燥前のフノリを使う。
加工には、フノリを洗って砂やゴミをとったり、天気に合わせて干したりと手間がかかるが、「この味を楽しみに来店する客も多い。地元の季節の味を守りたい」と、正光さん。
店で春から夏にかけて販売する「ふのり酢」は、フノリをもっと楽しんでもらおうと、孝子さんが考案したオリジナル品。テングサから寒天を作るのにヒントを得たもので、水につけた乾燥フノリを、水と酢、砂糖を加えて煮て固めたもの。「ふのり酢には、乾燥フノリを使います。さっぱりとした味わい。家庭でも作ってもらえたら」
乾燥フノリと水、酢、砂糖を煮て固めた「ふのり酢」
(シリーズ終わり)