52歳 支えられ3度目の王者に 総合格闘技選手・桜井さん〜33歳の選手に大差の判定勝ち(茨城・水戸市)
ベルトを肩に掛ける桜井選手。水戸市のジム「R‐BLOOD」で

 水戸市千波町の格闘技ジム「R‐BLOOD(アールブラッド)」の代表を務める52歳、桜井隆多さんが、20年を越えるプロ総合格闘技選手生活で3本目となるチャンピオンベルトを巻いた。今月、東京で行われた総合格闘技団体・グラチャンのウェルター級(77・1kg)トーナメントで優勝してのことだ。

 トーナメント決勝の対戦相手は、親子ほどの年の差ともいえる33歳。5分3ラウンドを戦い3対0で判定勝ちした。桜井さんは、「命をかけて戦った。次に進む権利を得たことがうれしい」と、振り返る。

 総合格闘技は、パンチ、キック、投げ技、寝技も許されるけんかさながらの競技。グラチャンは、そのプロ団体の一つだ。

 桜井さんが最初にチャンピオンベルトを巻いたのは33歳のとき。ディープという団体のものだった。ディープは当時、世界的に人気を集めていた総合格闘技団体プライドへ向かう登竜門といわれた。桜井選手は、ディープのベルト獲得の前後、プライドのリングでもキャリアを重ねた。

 2本目のベルトは、2019年に獲得。グラチャンも関連するグランドという団体のベルトだ。

 今回の快挙は、年齢の面でも注目を集め、格闘技専門ニュースサイトなどにも取り上げられた。52歳という年齢は、総合格闘技界で特殊だ。団体のチャンピオンレベルでは、桜井さん以外に皆無といっていい。

 桜井さんの筋骨隆々の体は若々しく、特別な体質なのかとも思わせるが、実際のところは「年齢相応」と話す。スタミナや、ダメージに対する耐性(打たれ強さ)は、「昔とは全く違う」。また、全身に古傷があり、新たな傷を負いやすくもなっている。今回の試合前も、練習中に膝を痛めた。保険のきかない特別な注射(PRP注射)を打って試合に臨んだ。

 では、なぜ勝てた? それは、年を重ねることで身に付けた強みのせいだという。一つは経験値。「練習にも、試合運びにも緩急をつけられるようになった」。もう一つは、支援者たちの存在だ。その存在が、大きな粘りをくれているという。ベルトを取った今は、支援者へのベルトを携えての報告会に忙しいほど。

 桜井さんの格闘技選手としての原風景は、小学生のころにある。タイガーマスクなどの人気プロレスラーにあこがれて腕立て伏せに精をだした日々。当時は、一緒に夢を追う友人が大勢いた。

 成長するにつれて、周囲が現実的な道へ目を向けるのは当たり前のことだった。それでもわが道を歩き続け、総合格闘技の世界でプロになった20代の後半、周囲に練習仲間はいたが、純粋な支援者はいなかった。

 それから20年以上の月日を経た。チャンピオンとして脚光をあびたのは、キャリアのごく一時期にすぎない。それでもいつも、一途に夢を追った。そんな姿は、本人が気が付かない間に、多くの人の心を熱くした。

 近年の試合は、「負けたら引退」のつもりで挑んでいる。それは「命がけ」という意味だ。そんな中で、また、チャンピオンベルトに手が届いた。

 桜井選手はいま、「少しわがままをいってもいいかな」と思っている。これまでは、対戦相手も舞台も、えり好みしないのが桜井流だった。「戦えるだけでもありがたいから」

 流儀を変えてまでのわがままは、「チャンピオンとしてライジンのリングに上がりたい」というものだ。ライジンは、かつてのプライドに置き換わったといえる日本の頂点にあるリング。

 「あそこでなら、心から燃えることができる。そうすれば多くの人に喜んでもらえる」と桜井さん。

 

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