城里町下古内の茶園、高安園の畑では、刈りそろえられた茶の木に、小さな新芽が伸び始めている。
“新茶前線”は今、静岡県付近をゆっくりと北上中で、本県では、来月上旬からの摘み取り開始が見込まれる。
茶の味わいは、茶の種類や、産地によっても変わるが、年ごとの大まかな特徴は、全国的に共通することが多いという。同園2代目の高安達夫さん(63)は、「気候のせいなのかな。静岡や九州の方の産地でも同じ傾向なんだよ。風の便りによると、今年のお茶は味も香りも良さそうだよ」と話す。
同町の古内地区は、本県の三大銘茶の1つに数えられる古内茶の産地。古内茶生産組合には8軒の農家が所属している。
新茶の摘み取り作業は、“短期決戦”だ。約2週間で、蒸したり揉んだりの加工作業を含む、すべてを終わらせる。理由は、新芽の成長速度が早く、木ごとに見れば、摘み取りにベストな期間は1、2日しかない上、摘み取った葉を、当日のうちに加工する必要があるから。
その2週間は、「てんてこまいなんだ」と話す達夫さんは、お茶栽培の手伝いを始めた中学生のころを振り返った。
今、同園は、自社の加工場を操業しているが、当時は、共同加工場へ持ち込んでいた。季節になると、達夫さんら茶農家の子どもたちは、当たり前のように駆り出され、大人たちに至っては、2週間の間は、家に帰ることすらできなかった。「夜通し働いて、工場で稼働する機械のわきで寝起きしていた」
今は機械のわきで寝ることはないが、忙しさに変わりはない。
また、家族総出の作業であることも同じだという。達夫さん夫婦のすでに独立した3人の息子たちも、収穫期には貴重な労働力になる。
「茶農家の子どもだから仕方ないよね」とは、達夫さんの妻、智子さん。その表情は、息子たちに手伝ってもらうことにためらいがあるというより、そんな日々が待ち遠しいという様子。
収穫期直前のゴールデンウイークには、家族総出のバーベキューが恒例だという。「精を付けて頑張ってもらわないとね」と智子さん。
同園での新茶の販売は5月10日頃からの予定。同園☎029・288・4801。5、6月は無休。