日立市大みか町の茨城キリスト教学園高校の国語科教諭、斎須博さん(54)が、アマチュア落語家として全国でもトップレベルであることは、同校内のほとんどが知るところ。昨年9月に神奈川県で開かれたコンテストで最優秀賞に輝いたことは、インターネットのニュースでも配信され、生徒たちのSNSでも話題になった。
しかし、生徒に落語を披露するのは、1年間のカリキュラムを終えた学年末だけと決めている。「授業が進めにくくなる気がして」と斎須さん。
教壇で生徒の質問を受ける斎須さん
斎須さんの落語家としての名前は、二松亭(にしょうてい)ちゃん平(ぺい)。キャリアは、出身大学の落語研究会に入会して以来だが、その前にも下地はあった。母親が落語好きで、テレビなどで触れる機会が多かった。また、母親は、教育の一環で、自分の前で本を朗読することを求め、それをよくほめた。「おかげで、人前で話すことが大好きになった。
コロナ禍以前には、地域イベントなどで、年間90回、高座に上がった年もある。好きが高じたのは確かだが、周囲に求められて、自然と機会が増えていったというのが本音。
教諭になってからしばらくは、高齢者施設などへの慰問で年に数回高座に上がる程度。その後、落語仲間を増やそうと落語コンテスト「社会人落語日本一決定戦」に参加。3度目の参加で優勝すると、各方面から出演依頼が舞い込むようになった。
「教員は、誰でも落語ができるようになる」というのが、斎須さんの持論。人前で話すという共通点からだ。斎須さんはその上で、もう一歩深く、教諭という立場を生かしている。それは、学校を舞台にした創作落語を作ること。
代表作の「学校へ行こう」は、不登校の生徒を登校させようと奮闘するクラスメートらの話。笑いに感動が混ざるサゲ(落ち)になっている。全国コンテストで初優勝したときの演題だ。
教師としては、そろそろベテランの域で、入試広報部長という肩書きも持つ。本業のキャリアを重ねるにつれて、落語家としての喜びも増えているから、両方とも手は抜けない。近年、何よりうれしいのは、校外の高座で、教え子たちと再会できること。
「教え子が、子どもを連れて観に来てくれて、それだけで感動しちゃうのに、その子が笑ってくれたら、もうたまらない」
新年号からの新シリーズは、茨城で活躍するアマチュア落語家たちから笑顔をもらう。