必要なものだから届けたい(茨城・行方)
ボランティアとして活動する麻生中学校の図書館で本を開く山本さん。館内の案内ポップは山本さんの手書き。元美術教諭という経験も生かされている

 行方市の山本保枝さん(68)にとって本は、人々と楽しく交流するためのコミュニケーションツール。

 主宰する私設ミニ図書館、なめがた文庫の歴史は、10年を軽く超える。システムは、公共施設や小売店などに本棚を置いて、本をセルフで貸し出しと返却を行うもの。山本さんは、読書ノートの感想などから、利用者の好みを読み取り、本の入れ替えなどを重ねる。最大時は5か所で運営。今も数か所を残す。

 同市の麻生中学校では、図書館のボランティアを務めている。細部に気を配る図書館内は、デパートの書店のような華やぎで、選書もきめ細やか。いまは、ウクライナにまつわる本が、目立つ場所に並ぶ。

 もう一つの顔は、「本を抱えたおせっかいおばちゃん」。犬の散歩で出会う人、意気投合した役所職員、お使いで出かける鹿嶋市の知人ほか、10人前後を相手に出前図書館のようなサービスをしている。

 同中学校の取り組み以外もすべて、無償の活動。原動力は、「う~ん。楽しいから」。

 20歳代に、読書を通して自由を学んだ。「本の中にはいろんな人や物事があって、それぞれが、ありのままでいいんだなと思わされた」。その思いを共有することが、今の活動につながった。

 大好きな児童文学評論家、赤木かん子さんの「すべての本は実用書」という言葉に感銘を受けた。「ファンタジー小説に描かれる夢物語だって、必ずだれかに必要なもの。それをつなぐ人がいてもいいよね」

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