全長7cm前後に成長した稚アユがいま、那珂川を、懸命に遡上(そじょう)している。常陸大宮市と城里町の境にある小場江堰(おばえぜき)にある魚道では、水しぶきとともに、元気に飛び上がる姿が見られる。
アユは1年で生涯を終える“年魚”で、遡上している稚魚は、昨年の秋から初冬に、川の下流域で誕生。そのまま川を下り、遡上までは、海で過ごしてきた。これから、川の中流域まで上って夏を過ごして、秋になると川を下って産卵する。
小場江堰の魚道は階段状で、稚アユは、段を飛び越えるときに姿を見せる。群れをなして遡上しているのか、数十匹がまとめて姿を見せたり、しばらく姿を見せなかったりする。
笠間市の山口義夫さん(73)は、野鳥撮影用のズームレンズを携えて稚アユを見つめていた。普段は、周辺の山でサンコウチョウを探しているという。「私たちの暮らしのすぐ近くで、私たちとはまったく違う生命が、全く違う営みを重ねている。それらに出合うたびに感動する」と、山口さん。