潮来 まつりに向けて心はひとつ  あやめまつりを控えるろ舟の船頭(茨城・潮来市)
ろ舟をこぐ矢萩さん


 全国に知られる大イベント、水郷潮来あやめまつりの開幕を5月中旬に控える潮来市の各地で、同まつりに向けた準備が進んでいる。同市延方の矢萩忠男さん(78)も準備を重ねる1人。その内容は、「体調を整えることだね」と笑顔。年明け以降は、トレーニングジムに通う回数を増やしているという。

 矢萩さんは、観光ろ舟「ろ舟遊覧」のキャリア16年の船頭。ろ舟遊覧は、「嫁入り舟」と並ぶ同まつりの人気の催しで、観光客らを乗せて、潮来市の象徴とも言える水路を遊覧するもの。水辺にはハナショウブが咲き、船頭それぞれの個性あるガイドも魅力になる。

 

 トレーニングが必要なのは、船頭は、全長約メートルのろ舟を、立ったまま操るなど体力勝負の一面が強いため。

 まつり期間中は、約30分の遊覧を、船頭1人あたり、1日10回ほどこなす。約1か月間のまつり期間の後半になると、「大好きな晩酌を控えるほどに疲れがたまるよ。それでも楽しいから辞められない」と矢萩さん。

 

 矢萩さんが船頭を志願したのは、長年勤めた会社を定年退職したのがきっかけ。矢萩さんは同市の生まれで、父親はかつて、川漁師だった。「ろ舟は、子どものころから遊び道具だったから」というのが志願の理由のひとつだ。

 

 「辞められない」と言わせるほどの楽しみはいくつもあるという。

 まずは、乗船客との交流だ。「みんな潮来に関心を持ってくれているから、口べたの私の話でもよく聞いてくれる」

 船頭仲間との家族のような交流も楽しい。時には、20代の若い船頭に助けられる。「外国人のお客がくると私は戸惑うばかりだから」と笑う。

 船頭以外でも、まつりに関わるみんなとは、一緒に地元を盛り上げようという、無言のつながりを感じている。

 昨年、たまたま乗せた親子連れが、嫁入り舟で結ばれた夫婦と、その子どもたちだったことがあった。「そりゃ、うれしかったよ。この土地と、あやめまつりのおかげで、人生が豊かになった」 〈シリーズおわり〉

 

 現在も、「鯉のぼりめぐりろ舟遊覧」という名称で、ろ舟遊覧の乗船を受け付けている。問い合わせは、いたこまちづくり観光事業部電話0299・94・2800

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