
スタジアムDJとは、Jリーグの各チームのホームゲームの際に、スタジアムの内外に声を届けるマイク担当者のこと。マイクに乗せる内容は、選手の紹介、サポーターの誘導、イベントやグッズの告知など幅広い。試合中に、「ゴール!」と叫ぶのも仕事だ。
各チームに担当者がいるが、「僕のように会社員を兼務しているのは一部。大学生のころからずっと続けているという人は他にいない」。そう話す寺田忍さん(43)の表情は、自信に満ちている。
昨年の今頃、水戸のJ1昇格を夢物語のように思っていたのは、多くのサポーターと同じ。「今期は、プレーオフに残れればいいなと思っていた」。首位に立った6月、「これは上を目指さないといけないな」と思ったが、「昇格」という言葉は、マイクの前でもプライベートでも、使えなかった。
「恐れ多い感じがしてしまって」
夏を経て秋になり、周囲のざわつきが大きくなっても同じ。初めて口にしたのは第36節でマイクに向かった時。残り試合は、その試合を含めて3試合のみ。だれもが「現実味十分」と認めるタイミングだった。
スタジアムDJになったのは、大学でアナウンスサークルに所属したのが縁。小学生のころからのアントラーズサポーター。「チームは違ったけれど、大きなやりがいを感じた」
就職しても辞められず、結婚しても同じだった。あっという間だったと感じる約20年の間に、選手とサポーターも大きく成長したと思っている。
自分の転機は、2008年のホームゲーム中、マイクの前にいたときのこと。3点を先制され、だれもがうなだれた場面。つい、「前を向いて追いつくんだ!」と叫んでしまった。出過ぎた言葉かと赤面したが、水戸が言葉通りに3点を挙げると、「チームと一緒に戦うというのはこういうことなのかもしれない」と思えた。
スマホの中には、スタジアムで自分がマイクに向かう姿を映した動画が何本もある。振り返って技術を磨くために、自分で撮影しているものだ。
昇格とリーグ優勝も決まった昨年の最終節の動画もあるが、「なんて幸せそうなんだろう」と、自分で笑ってしまうという。





