納豆ケーキに夢乗せて 1ホールに納豆20パック使用 パティシエの勝村さん(茨城・ひたちなか市)
ケーキ「観音寺」を持つ勝村さん

 ひたちなか市田彦の「お菓子工房たびこ」が販売するケーキ「観音寺(かんのんじ)」は、直径21のホールケーキ1個に、納豆20パック分を使っているという斬新な品。見た目はおしゃれなチーズケーキ風なだけに、納豆入りと知った客のほぼ全員が目を丸くする。

 今月10日に発売したばかり。7月10日の「納豆の日」に合わせた形だ。同店店主で開発者の勝村博昭さん(37)は、「みなさん、驚いた後に、鼻を近づける。食べてくれたほとんどの人は、『とってもおいしい』と喜んでくれました」と、ほっとした表情だ。

 

 ケーキは、タルト生地に、納豆のペーストを使ったクリームやジャムを重ねた構造。

 納豆のペーストは、オリジナルの「納豆グラッセ」を裏ごししたもの。納豆グラッセは、煮沸した納豆の粒を手作りのシロップに漬け込み、一週間かけてじっくり糖化させて作る。納豆の魅力を最大限に引き出すために考え出した手法だ。

 そのペーストを、生クリームやチーズなどのさまざまな素材と組み合わせて、納豆の風味と甘さが調和した新感覚の味わいに仕上げた。

 

 開発のきっかけは5年前、水戸商工会議所主催の「禁断の納豆スイーツコンテスト」に応募したこと。独自の手法の納豆グラッセが評価されて、審査員特別賞の「超絶技巧賞」を受賞した。

 コンテストに挑戦した理由は、「自分を試したい」と思ったこと。当時は、体調を崩して、勤めていたカフェを退職した頃だった。

 幼い頃からお菓子作りをすると夢中になれた。小学生の頃、図書館に行ってはお菓子のレシピ集を借りてきた。台所に立つと、時間を忘れて、夕飯の準備ができずに母親の裕美さんを困らせたこともあった。

 高校卒業後は、料理人からスタートしたが、パティシエの道をあきらめきれず、29歳の時に調理技術専門学校の製菓コースに入学した。休まず通い、「学校長賞」の表彰を受けて卒業した。

 精神疾患とも闘っている。症状の一つに、空想が広がってしまうことがあるが、「納豆スイーツの開発には、それが強みになりました」。納豆をスイーツにするなんて最初は無理だと思ったが、得意の空想や想像を広げて、「おいしくするにはどうしたらいいか」と考え抜いた。

 

 店は昨年の2月にオープンした。場所は自宅の一角。家族の協力も大きかった。観音寺の発売までに1年半をかけたのは、完全に納得できるまで磨き上げたかったから。コンテスト時のレシピをさらに改良した。

 夢は、「ケーキを通して、茨城名物の納豆のおいしさを伝えたい。世界の人たちにも食べてもらえたら、うれしいですね」と、勝村さん。

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 観音寺は1カット710円(税別)。納豆は常陸太田市の金砂郷食品から仕入れている。営業は毎週日曜の午前11時~午後7時。変更する場合もある。詳細は、同店のホームページ(https://sweetstabiko.com/)へ。同店070・9088・7305。

 

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