
「12月20日から1週間ほどは、レンコン農家にとってお祭りみたいなものなんです」と話すのは、行方市小牧のレンコン農家、小城謙治さん(38)。レンコンはおせち料理に欠かせない縁起物。そのため、年末は収穫量が最も増えて、レンコン農家が祭りのように飛び回るというわけだ。
小城さんは千葉出身で、7年前に就農を決めるまでは、この土地にもレンコンにもほとんど縁がなかった。以前の職場はJA茨城中央会(水戸市)のため、農業に興味がなかったわけではないが、「就農するとしても、定年後かなと思っていた」と、小城さん。
気持ちを変えた理由はいくつかある。一つは、デスクワーク中心の前職の業務を重ねる中で、「青空の下、自然の営みの中で働くのは最高だろうなあ」という思いが大きくなったこと。
その前職で知り合った農家に、導かれた部分もある。行方市でレンコン栽培をしていて、収穫体験に誘ってくれた。「それが宝探しのように面白くて」。レンコンは、深い泥の中に手を入れて収穫する。
最も大きいのは、「もちろん、妻が理解して、応援してくれたこと」。
「何とか形になってきたのは、4年目から」。それまでは、通常の半分も収穫できなかった。自分と周囲の田んぼを観察して、先輩農家や若手農家グループに相談した。
その間に、子どもが2人増えて、5人家族になった。うれしさに背中を押されて、「弱気になっている暇はなかった」と、笑う。
“祭り”と向き合うのは、小城さん1人だ。妻は勤めに出ている上、小城さんもかかわっているとはいえ、子育てに忙しい。
夜明け前に目を覚まし、胸まである胴長を着込んで田んぼに入る。「楽ではないけれど、楽しいです」






