日立市宮田町の遊園地「かみねレジャーランド」のジェットコースター「ドリームコースター」は、専門家らに「キャメルバック・スタイル」と分類される。キャメルバックとは、ラクダの背中という意味。ラクダの背中のように複数の山を上り下りするジェットコースターが、こう呼ばれる。
裏を読めば、ループ(回転)やスクリュー(旋回)のない刺激の少ないタイプといえるが、同園のジェットコースターの場合は、早合点しては損。同公園は、傾斜の厳しい山の山腹に立地。条件がそろえば、ジェットコースターからも、70km以上遠方を見渡せる。その特異性が、魅力を生んでいる。
一方、キャメルバック・スタイルならではの“優しさ”もある。ここのジェットコースターは身長が110cm以上で乗ることができる。一般的には、120cm以上だ。「ここが初めてのジェットコースター体験だったという人は多い」とは、同園の内山誠士さん(37)。
乗車時間は約1分半。運行距離は470m。クライマックスは2回ある。1回目は、スタートから1分近く続いた巻き上げ(上昇)が終わり、下り始める瞬間。2回目が、本当のクライマックス。場所は、1回目の下りが登りに転じ、頂点に達したころ。その地点の海抜は、約120m。時速は、最高の70㌔超に近づいている。目前には、工都・日立の大パノラマ、その先には太平洋。
景色に飛び込んでしまいそうな気分になる。
▲ジェットコースターのレール。写真中央上部がクライマックスの地点
ジェットコースターは、1983年の開園当時、同園内に7つしかない遊具の1つだった。同年には、東京ディズニーランドが開園。日本全体が、好景気に沸いていた。
同園の土岐久典さん(63)は、開園の年に、同園を運営する日立市公園協会の一員になった。「開園の前日は朝方まで準備した。地域の期待が、それくらい大きくて、私たちも、力が入った」と振り返る。ジェットコースターは当初、数時間待ちが当たり前だった。
乗車部分は、3度の全面リニューアルを重ねて現在に至る。世間のジェットコースターは、過激化していく流れだった。それらへの対抗心もあって、乗車部分の出入り扉を支柱だけにするシースルータイプを採用したこともある。
いまの乗車部分の先頭には、同園のキャラクター・カーミーが立つ。カーミーは、「かわいい案内役」といった様子で、一見して、絶叫マシンの雰囲気はない。
土岐さんは、先日、同園のCM撮影のために、数年ぶりにジェットコースターに乗車した。
「断り切れなかった」ともらしした後、「苦手なわけじゃないよ。ずっと一緒に歩んできたのだから、大好きに決まっている」と笑った。