水戸市の水戸啓明高校3年の渡辺凜さん(18)は、陸上競技三段跳びの県高校女子の記録保持者だ。
記録は12㍍05。記録したのは昨年6月に栃木県で開かれた北関東大会。その日のことは、昨日のことのように覚えている。
前日に出場した走り幅跳びでは、「自分の悪いところが出た」。ライバルの直前に飛んだすばらしいジャンプに圧倒されてしまった。
翌日に三段跳びを控えていることを知る仲間たちは、期待を込めて励ました。長年見守ってくれている水戸アスリートクラブの小圷智子コーチも同じだった。
新記録を打ち立てたのは、6回中の1回目のジャンプだった。助走の一歩目から、いつもと違うのを感じた。ホップは、迷い無く踏み切った。次のステップは、苦手意識があったが、思い切り歩幅を広げられた。最後のジャンプは、宙に跳んでいる感覚だった。
着地したときに、自己新記録は確信したが、見守っていた小圷コーチの涙には驚いた。涙の理由は、県高校新記録であることを確信したからだった。その瞬間までの記録は、20年余り前に、小圷コーチが出したものだった。
渡辺さんは、周囲の期待や応援をプレッシャーに感じてしまうことも多かったが、この日は力にできた。「いつごろからか、積み重ねてきた努力を信じられるようになった」。その感覚が消えることはなく、続いた栃木国体でも、この日に次ぐ、会心のジャンプができたという。
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新シリーズは、干支(えと)にちなんで、「ジャンプ」がテーマ。