展覧会「いわさきちひろ展」が24日から、水戸市千波町の県近代美術館で開かれる。同館、ちひろ美術館主催。
画家いわさきちひろ(1918~1974年)は、「世界中のこどもみんなに 平和としあわせを」と願い、生涯にわたって子どもを描き続けた。美しい色彩とやさしさにあふれた作品は、没後約半世紀を過ぎたいまも多くの人を魅了している。
「ちひろファンはもちろん、ちひろを知らない世代の人にも楽しんでもらえたら」とは、同館美術課首席学芸員の吉田衣里さん。吉田さんに、展覧会の魅力を聞いた。
吉田さん
◼︎展示の趣旨について教えてください
童画家として世に出たちひろは、絵本画家として才能を開花させます。詩のような短い言葉と、絵の具のにじみをいかした絵が響き合った作品は、絵本の世界に新境地をもたらすに至ります。油彩画や素描など希少な初期作品から晩年のものまで、約120点の原画と豊富な資料で、その生涯と作品を紹介します。
はなぐるま 1967年 ちひろ美術館蔵
◼︎子育て世代にも見てほしいと呼びかけていますね
ちひろの青春時代は戦時下で、女性は結婚して家庭に入ることが当然とされました。ちひろは、親が決めた結婚の後、2年足らずで夫を亡くし、疎開先の信州から単身で上京、絵描きとして身を立てる決意を固めます。
やがて、再婚して男児を出産し、妻として、母として、絵描きとして奮闘したちひろは、強くなければやさしくなれないことを知っていました。悩みながらも次々と新しいことに挑戦し続けたちひろ。彼女の残した作品とことばは、仕事に家庭に忙しい現代の私たちにも多くを語りかけています。
子ども 1949年〔コンテ〕 ちひろ美術館蔵
◼︎描く技術に注目する展示もありますね
ちひろが描く赤ちゃんは、やわらかな肌の感触や温もりなど触覚的な記憶や、かわいいという感情を喚起します。
余白を生かした構図と、簡潔な筆使いから、作品は一見すると何気なく描かれたようですが、若い頃から磨き続けた巧みな描写力、水彩絵の具やパステルなどの画材を自在に操る技に支えられています。原画だからこそ見てとれる線の勢いや、水彩絵の具の質感なども、じっくり味わってみてください。