【梅雨点景】嫁入り舟から幸せの波紋 水郷潮来あやめまつり(茨城・潮来市)
前川を進む嫁入り舟。奥にかかる橋は思案橋

 6月5日の水曜日、潮来市あやめの水郷潮来あやめ園は、県内外からの行楽客でにぎわっていた。水郷潮来あやめまつりが開催中であることが一番の理由だとしても、平日とは思えないほどの様子。

 晴天であったことと、この日は、同まつりのメインの催しの嫁入り舟の運行が予定されていたことが影響していた。

 嫁入り舟には、ろ舟と呼ばれる小型の木舟が使われる。白無垢(むく)姿の花嫁を乗せて、同市潮来の津軽河岸あと広場前の前川を出航し、あやめ園のろ舟乗り場を目指す。そこで、花婿が出迎えるというストーリーだ。

 

 人気の見学場所は、あやめ園前の前川にかかる水雲橋と思案橋の上。嫁入り舟到着の30分前には、それぞれの橋が人で埋まった。嫁入り舟が到着するころには、前川の両岸も人でいっぱいになった。

 嫁入り舟がやってくると各所から、「おめでとう!」「きれいだよ」の声が飛んだ。新郎が姿を現すと、「新郎もがんばれよ」の声も。一帯に笑顔があふれ、温かなムードに包まれた。

 

 嫁入り舟は、昭和30年代の前半まで、同地区で実際に行われたことを再現している。当時、地区内の移動の多くは、水路を使って行われた。それは、嫁入りするときも同じで、花嫁と嫁入り道具も、舟を使って嫁ぎ先に向かった。同まつりでは、昭和60年以降に、実際のカップルを公募して催しとしての嫁入り舟を行っている。

 

 この日、嫁入り舟に乗ったのは龍ケ崎市出身の鎌田寿梨さん(26)。花婿は、阿見町出身の鎌田一希さん(25)。2人は神奈川県に暮らしている。応募のきっかけは、寿梨さんの祖父のすすめ。祖父も、龍ケ崎市に住んでいるが、潮来が好きで、嫁入り舟見学に何度も来ていたという。「おじいちゃんが喜んでくれるなら」という思いからだった。

 嫁入り舟について何も知らなかったという一希さん。2人でインターネット動画を見るなどして研究を重ねたという。

 見学者らに手を振るなどしていた寿梨さんは、「みなさんの優しさがうれしくて、手を振りたくなった」とほほえんだ。

 

 同まつりは6月16日まで。嫁入り舟の運航は、15、16日に予定されている。

 

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