
昭和30年代生産のブルーバート、ダットサン、セドリックや、それらより古い車もピカピカに整備して展示販売している日立市十王町伊師の「ガレージ・エバーグリーン」の店主は、元中学校の校長だ。
高萩市の洋服店で生まれ育った征矢真一さん(68)。教諭としての最後の勤務先は、同市の松岡中学校だった。
同店は、3年前にオープンさせた。キノコの生産工場だったというコンクリート打ちっ放しの味わいある建物に、10台あまりの旧車(クラシックカー)を並べている。
旧車以外にも年代もののバイク、自転車、オーディオ機器、おもちゃほかがところ狭しと並ぶ。すべて征矢さんが長年かけて収集したものだ。
今も改装中だという店内は、うっすらとペンキの匂いが漂う。時折やってくる客との様子は、長年の友人同士というように楽しげだ。
車好きは、父親ゆずりだという。征矢さんが知る限りでは「子ども時代、高萩市内で車があったのは、うちを含めて3軒だけ。豊かだったわけではないから、古い車を無理して買ったんだと思う」
教諭として初めて赴任した中学校には、真っ赤なフォルクスワーゲンビートルで出勤した。53歳で亡くなった父と同い年になったとき、「父と同じダットサンがほしくなった」。それ以来、旧車ばかり乗り継いでいる。
高萩市の山間部の君田中学校の校長だったころ、周辺でNHKの朝ドラ「ひよっこ」の撮影が行われた。撮影スタッフとのおしゃべりが発展して、愛車のダットサンに乗ってタクシーの運転手を演じた。「生徒たちが喜んでくれたのがうれしかった」
教諭を退いた後の職場にいたころ、体調を崩した。「好きなことを思いっきりやらなくちゃ」と思い立った。
旧車の販売店なのは確かだが、ずっと手元に置いておきたい車も多いという。
「“終活”といって、持ち物を減らす同世代もいるけど、僕の場合は、まだまだ増えそう」と笑った。