【おいしい秋だより】紅葉に先駆ける赤 楽しみ深めるアップルパイ(茨城・大子町)
自家製アップルパイについて話す藤田さん

 県内一のリンゴの産地・大子町に、リンゴの収穫シーズンがやって来た。リンゴ園は、町の東部や西部などの山のなだらかな傾斜に広がっていることが多い。

 同町産の代表的な品種は10種類ほど。今月までは、「つがる」などの早生(わせ)品種が実り、10月の本格シーズンには、「秋映(あきばえ)」「シナノスイート」「紅玉(こうぎょく)」、町オリジナル品種の「奥久慈宝紅(ほうべに)」などが色づく。11月からは、リンゴの王様とされる「ふじ」が収穫期になる。

 同町のリンゴは、「樹上(じゅじょう)完熟」の後に収穫される。早採りをしないで、木で実を完熟させる。うま味が格段に増すのが自慢だ。流通には乗せにくくなるが、同町を訪れた人だけが食べられる貴重なリンゴという魅力が加わる。

 

 

 近年、リンゴを求めて同町を訪れる人の目的に加わっているのが、アップルパイ。町内のリンゴ園のほか、パン店やレストランなど8軒ほどが作っている。大きさも味付けも個性豊かだ。

 同町浅川の藤田観光りんご園のアップルパイは、同園の藤田史子さんが考案した。大振りに切ったリンゴがぎっしり詰まっていて、パイというより、リンゴを食べている感覚だ。

 史子さんのアップルパイの原点は、20代の頃、旅先のニューヨークで食べた味。「ニューヨークはあこがれの場所だった。アップルパイは、ニューヨークのおやつ文化の主役の一つなんです」

 同園3代目の卓さんとの結婚後、園のリンゴでパイ作りを始め、2006年から販売を開始。今年、自分が考案したアップルパイをニューヨーク州で販売するという機会を得た。日系スーパーでの販売会に参加した。「本場ともいえる場所の人たちに『おいしい』と言ってもらえた。うれしくて泣きそうになった」と、史子さん。

 同町産の生のリンゴに関していえば、県内に暮らす私たちにぴったりの楽しみ方は、品種ごとの味わいの違いを楽しむこと。各品種の旬に合わせて気軽に訪ねることができる私たちの特権だ。

 「酸味も甘みも、それぞれにみんな違う。リンゴのソムリエのように、食べ比べを楽しんでみて」と、史子さん。

記事中写真=赤く色づいてきたリンゴ

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Xでフォローしよう