
日立市白銀町の日立武道館(旧共楽館)の敷地内にある通称「戦災桜」が、今年も花を咲かせた。品種名は四季桜。春以外に開花することもあるため、この名が付いている。同館の四季桜は、4、6、8、11月に開花した記録がある。春の開花は例年、4月中旬まで。
戦災桜という通称は、第二次世界大戦の戦禍を被ったことから付いた。同館の魅力を伝える活動をするNPO法人「共楽館を考える集い」代表の佐藤裕子さん(72)は、「共楽館の屋根に落ちた焼夷(しょうい)弾の破片が、戦災桜の幹を貫通した」と話す。幹に穴が開き、一時は、樹皮一枚だけの状態になったという。
現在の幹回りは約140cm。根や枝が絡み合ってつくられた幹が、全体を支えている姿は、力強さを感じさせる。
同NPOの活動には、地域の歴史を後世に伝えることも含まれる。戦後80年にあたる今年は、「戦災桜」と印字したプレートの設置も検討している。
佐藤さんは、「戦争で悲惨な目にあったサクラが、今も花を咲かせる理由をしっかりと考えていきたい」と話す。同館を管理する同館事務局の椎名光寿さん(67)は、「サクラに思いを託す人が大勢いるから、その思いに応えて、花を咲かせていると信じている」と話した。
同館受付に声をかければ、敷地内からサクラの観賞ができる。