
「障害や病の有無に関わらず、だれでも気軽に集える場所をつくりたい」
3年前、そんな思いで夫婦が開いた店が、8日で閉店することになった。客は少しずつ増えていたが、街なかの店舗で、家賃など資金繰りに苦しんだ。夢の実現は道半ば。「必ず再開したい」と、2人は前を向いている。
店は、鉾田市鉾田にあるカフェ&コミュニティースペース「ぱれっとらいふ」。店内では、米粉を焼いたワッフルなどのオリジナルカフェメニューの提供のほか、歌声サロンやマルシェ、体験会などの開催にも取り組んだ。
夫婦は、室(むろ)智美さん(36)と祐次さん(41)。智美さんは、音楽療法士という立場で福祉に従事し、祐次さんは臨床工学技士の資格を持ち、医療に従事してきた。それぞれ、いまも現役だ。
店を出す夢は、2人が付き合いを重ねるなかで形になった。
智美さんが今の道に入ったのは、10代で両親を亡くしたことが影響している。2人とも病死だった。人の心に寄り添いたいという気持ちが根を広げ、幼少期から大好きだったピアノと結びついた。
祐次さんは、智美さんと出会った時すでに医療の世界にいた。仕事を通して知った社会のさまざまな課題を智美さんと話し、理解し合った。祐次さんはもともと料理が得意で、料理で人を喜ばせたいという希望もあった。
「障害や病の有無に関わらず、だれでも気軽に集える場所をつくりたい」というコンセプトは、2人の誓いだったと言っていい。“利益がある無しに関わらず”という言葉を足してもいいほどだ。
現実の厳しさを知らないわけではなかったが、店内で巻き起こる小さな物語が、2人を勇気付けた。
市内に暮らす女性の一言も、忘れられない。病から長年にわたって外出がままならないが、「今日は少し体調がいいから、ここへ来たいと思って」と、来店してくれた。居合わせたほかの客とも会話するなどして、楽しんでくれた。
「店を再開する」という希望は2人共通のものだが、その中身に小さな違いもある。祐次さんの方には、現実的な見方も色濃いが、それは智美さんを守りたいという思いからでもある。
智美さんが、すでに家賃の安い転居先を探していることを、祐次さんは気がつかないふりをしているという。智美さんは、「大丈夫、優しい人だから」、祐次さんは、「僕だって、再開したくて仕方ないんだよ」と小さく話した。
なお、店の最新情報は、同店のインスタグラム(アカウントはpalette.life2023)に掲載する。





