那珂市菅谷の元中学校教諭、藤田正幸さん(68)はこのほど、定年退職を機に出かけた四国お遍路の旅の思い出をまとめた本「出逢ひ旅(であいたび)」を、文芸社から出版した。48日間、総歩行距離1419kmに及ぶ旅のエピソードや感想などを、時系列に沿って紹介している。
「お遍路に興味を持つ人の背中を押すことができれば」と藤田さん。藤田さん自身、お遍路の関連本170冊を読破して出発したという。
最初のエピソードは、お遍路に向かう前に、意気込みや期待をまとめた文章を、四国の新聞社数社に寄稿したこと。四国に暮らす知人や、一般読者からも反応があり、「大きな励みになった」と藤田さん。
旅に出てからは、人々との交流の場面が次々に盛り込まれる。顔ぶれは、地元の人たち、藤田さんと同じお遍路の旅人、霊場の人たちとさまざま。それぞれ短い時間ながらも、心のこもった交流を重ねた様子がうかがえる。
藤田さんの旅の目的の1つに、四国の人たちが「お接待」に向かう理由を知ることがあった。お接待とは、四国の人たちが、お遍路の旅に取り組む人たちに向ける親切のこと。「驚くほどの親切なのです」と藤田さん。
同書の終盤に、「お接待は恩送りなのではないか」の一文がある。お接待に当たるそれぞれの人たちが、これまでに受けた恩を、お遍路の人たちに返している(送っている)と感じたという。
四六判271ページ。1500円(税別)。インターネットのアマゾン、楽天などで取り扱い。