水郷の田んぼに早くも稲穂 一番星栽培農家(茨城・潮来市)
稲穂の具合を確認する内野さん。「今から収穫が楽しみ」と笑った


 野山の緑が色濃くなる中、潮来市の水田では、早くも稲穂が揺れていた。

 苗の種類は、極早生(わせ)品種の一番星。今月の中旬には、こうべを垂れ始め、来月の8日から収穫が始まる予定だ。「お盆の食卓においしい新米を届けるのが私たちの使命」とは、同市で米作りをして半世紀以上の内野幸夫さん(73)。

 一番星は、2013年に生産が始まった県の独自品種だ。栽培に励むのは、同市大規模稲作研究会のメンバーたち。早く収穫されることだけでなく、食味などの味わいも自慢だ。

 一番星の開発は、同市の米農家らの悲願だった。同市の米農家らが質の高い極早生品種を望んだのは、同市一帯が、台風の大水の被害を受けることが多かったから。「その分、土地が肥えているのだけれど、収穫できなくてはね」と内野さん。台風シーズンがやってくる前に収穫すれば、悩みが解決できると考えた。

 治水工事の効果や、気象変動などで、大水への不安は和らぎつつあるという。それでも一番星の栽培に力を入れるのは、初物の新米を前にした消費者の笑顔を知ったから。「みんな、『待ってました』というばかりの反応をしてくれるんだよ」と内野さん。

 各地の夏祭りの関係者から稲穂の提供を求められることもあるという。開催のタイミングで、金色に輝く稲穂が収穫される場所は少ないからだ。「早くて、うまくて、縁起もいいのが一番星。今年も、順調に育っているよ」と内野さん。

 

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