潮来市洲崎の建築業、荒野麟太郎さん(22)は、プライベートのほぼすべてをこいのぼりにささげている。
メインは、手描きのこいのぼりの制作。退勤後や、雨で急きょ、仕事が休みになった場合も、ガレージの一角のアトリエスペースにこもる。
休日は、県内外の人形店巡りだ。「伝統ある店の奥に、古くて驚くほどすてきなこいのぼりが保管されていることがある」と荒野さん。そうして集めたコレクションは440点ほどを数える。
もう一つ、近年力を入れているのがこいのぼりの普及活動。仲間たちと協力して、イベントを企画したり、参加したり。
こいのぼりのシーズンでもあるゴールデンウイークは、普及活動の繁忙期。4月29日からは、北茨城市で手描きのこいのぼりを制作販売する人形店「三国屋」と協力して、こいのぼり展を開く。会場は、水戸市見川の偕楽園公園センター。三国屋のこいのぼりと荒野さんのコレクションを並べるという内容だ。会期は5月5日まで。常陸太田市の竜神大吊橋で恒例の「竜神峡鯉(こい)のぼりまつり」では、荒野さんの手描きのこいのぼりが展示される。長さ5mの大作だ。同まつりの会期は、4月27日~5月12日。他にも、県外のイベントに関わっている。
保育園に通っていた頃、家族にねだって買ってもらったこいのぼりが泳ぐのを見て、胸がときめいたのが原点。「とっても自由で、魚が空を泳いでいるという意外性もおもしろくて」
荒野さんが喜ぶ姿に気を良くした家族が、100円ショップのこいのぼりを100匹以上泳がせるなど気持ちを盛り上げてくれたことも背中を押した。
高校生になるとサインペンを画材に制作を始めた。アルバイトを始めてからは人形店巡りも平行した。卒業が近づくと、各地のこいのぼり制作会社に履歴書を送ったが、かなわなかった。あきらめきれず、東京の衣類の染色会社に入社した。「色の基本を学ぶことができた」。東京の狭い自室でも制作は続けた。
2年前に帰郷した。建築業は家業だ。最近は、SNSを介して、活動の幅を広げている。一緒に普及活動に励む仲間の多くもSNSで知り合ったという。「たまにみんなで顔を合わせると、こいのぼり談義がとまらない」
将来的にプロの制作者になるかどうかは分からない。「いまはとにかくいろいろ経験して、学びたい」。仕事の休み時間にも、イベントの提案などで電話を取ることが多いという。