カフェを始める春はもうすぐ 就労支援事業所・諏訪ひまわりの利用者(茨城・日立市)
笑顔をそろえる利用者ら。前列左が神野さん。同右が小石さん。後列中央が阿部さん

  日立市諏訪町の就労支援事業所「諏訪ひまわり」の利用者有志とスタッフは、4月に予定するカフェのオープンに向けて、期待で胸いっぱいといった様子で準備に励んでいる。

 カフェは、接客も裏方も、利用者が中心になって切り盛りするもの。場所は、同市の諏訪コミュニティーセンターの近く。サブスク(定額制)での運営となる予定で、「地域のみんなの居場所になれば」と、同事業所は期待している。

 

 就労支援事業所は、障害がある人などに就労の機会を提供する場所。有志は、同事業所が行うコーヒー事業に携わる利用者たちで、CCBメンバーと呼ばれている。CCBは、後述するチャレンジ・コーヒー・バリスタの略。コーヒー事業は、コーヒー豆の選別、焙煎(ばいせん)、販売も含む。

 カフェのオープンは、コーヒー事業を始めた一昨年からの計画。昨年の秋、思わぬ追い風が吹いたことが、CCBメンバーの姿勢に影響している。

 

 追い風は、障害がある人がコーヒーを入れる腕前を競う全国大会で優勝したこと。その大会の名前が、チャレンジ・コーヒー・バリスタだ。全国の10団体が参加した。

 メンバーの神野静香さん(40)は、「私たちが力を合わせればすごいことができると分かった」と笑顔で話す。小石仁美さん(24)も、「いいカフェにできると確信が持てた。友だちみんなに来てもらいたい」と期待を込める。

 

 優勝までの道のりは平坦ではなった。

 競技は、障害がある4人と、一般の1人でつくるチームで行う。メンバーは、抽出担当のドリッパー、豆をひくミル担当、タイムキーパーなどを分担する。役割を決める作業が最初の壁だった。

 花形のドリッパーを、4人全員が志望すると、「徹底的に話し合った」とは、チームのメンバーになった同事業所職員の阿部達郎さん(40)。話し合いは、互いの障害の特性をあぶりだして、“向き不向き”を判断すること。「簡単ではなかった」

 動き出した後も壁は多かった。多くの人の目にさらされること。時間に追われること。会場となった東京の人の多さ。高層ビル。すべてが、特別な感情を呼び起こしかねない非日常だった。

 

 諏訪ひまわりチームの競技で、好ポイントを稼いだものに、独自に盛り込んだパフォーマンスがあった。競技前のあいさつを、複数の言語と手話でも行ったことだ。

 パフォーマンスには、自分たちが心を込めてつくりだしたものを、あらゆる人たちに届けて、喜んでもらいたいというメッセージを込めた。それは、カフェの運営に込める願いでもあった。

 

 CCBメンバーを、優勝やカフェのオープンと変わらぬほどに喜ばせているものに、同事業所の他の利用者の中から、次回大会への出場希望者が出てきていることがある。

 新メンバーは、まもなく設備が整うカフェで練習を始めることになる。

 

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